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不如帰

[243]  毒リンゴ  2008-07-29投稿
『ほうら、やっぱり、ダメだった。』




仕事先の営業会社で働き始めて四年。


後輩に次々と追い抜いていかれ


この四年で手に入れた物は



悔しさを隠すための作り笑顔と

大胆すぎる諦めの早さか。



第一に人間ってのは不平等すぎる



小学校のころ好きだったクラスのマドンナとは一度も目が合わないまま別の中学に進む事になった。


僕は知っていた。


マドンナは僕の親友を思い続けていたこと。



『あいつなんて、僕より少し足が速いだけじゃないか』



『勉強だって僕より少しできるだけだ、掛け算の九九を覚えられたからってなんなんだ』


『家だって親だってそうだ。ウチの親は平日の昼間から酒を飲んで喧嘩を繰り返している。それでも毎月の給食費とか、支払いに遅れた事は無い』



…体が大人になりわかった事がある



アイツが足が早かったのは15000円もするシューズを履いているからで


アイツが僕より勉強できたのはいい塾にいっていたからだ。



ただアイツの親は僕の親が働く会社の社長で、僕の親は仕事場でよく土下座をしていた。





僕は涙の代わりに血を垂らして


グチをこぼさず唇を噛んで


お互い大人になった今アイツの背中を見ながら爪をといでいる。


狂気を飼って水をやる



今日も寝る前ベッドの中で湿っぽい布団の中で自分に言い聞かせるように少し大きい声で言った。


『ほうら、やっぱり、ダメだった。』

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