Killing Night Freaks/Chap.1-4
分厚い鉄で出来ている、屋上へと続くドア。触るとひやりとした感触を返してくる。鼓動は一層強く早く鳴り響き、前後感すら怪しい。深呼吸をして、酷く重いドアを、
「…………っ」
開けた。
ごう、と耳元で風が鳴る。屋上に強く吹き付け、ドアの前で蟠っていた空気が抜ける音。揺らされた前髪の向こう、星々をちりばめた群青の夜空には煌々と輝く満月が有る。星月夜。幻想的な風景の、その中に――――
「…………あ」
居た。艶やかな黒髪を棚引かせ、給水塔に腰掛ける少女が一人。水晶のような瞳に星空を映し、ひとり、佇んでいる、
血まみれの、少女。
屋上には夥しい血液が染みを作っており、周囲に濃厚な血臭を漂わせている。死体は見えない。ただ肉片らしきものはちらほらと見受けられた。まだ渇き切っていない血溜まりの中にぷかりぷからと浮いている。一歩足を踏み出せば、血液が跳ねて生温い温度を残していった。
惨劇の後。死体が有り犯人がそこにいる。けれど、不思議と恐怖は無かった。寧ろ昂揚が有った。先ほどから感じていたものとは比べものにならない興奮。血液が沸騰したかのように熱くなる。
熱。熱。熱。生き物の熱、生きている僕の熱、生きていたモノの熱。入り交じり溶け合い冷たい夜を犯していく。
叫びだしたいような衝動が喉にある。駆け出したいような情動が胸に有る。けれど耐えた。耐えて、彼女が何かを言うのを待った。彼女は何を言うだろう。彼女は何をするだろう。期待に胸が膨らみ張り裂けそうになる。なんでもいい。ただ、僕もそちらに連れていってくれさえすれば。
願いが通じたのか、少女の瞳が僕を捕らえた。磨かれた宝石の様な瞳が、揺れて、一瞬で濁っ僕は反射的に頭を降って飛来した何かを躱していた。後ろで跳ねて硬質な音を立てたのはナイフ。確認しなくても僕の目はしっかりと捕らえていた。ゼロトーレランス0200。変わった趣味をしている。投げナイフでも無いし。戦慄する前に感心とも呆れとも取れるものが脳内に走り、それを凌ぐ速度で大地を蹴った。血で滑る。転ぶ。格好悪い。けれど串刺しにされるよりはマシだろう。先程僕が居た場所に少女の身体ごと捩込まれたナイフを見てそう思う。照り返しの無い黒い刃。投げられたものと同じZT0200。振り向き、それも放たれる。視認不可。速い!
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