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[623]  黒風呂  2008-07-30投稿
憎き人間。
奴らは敵だ。
今までに何人の仲間が奴らの手によって殺されたことか。

これはある蟻達の話である。

蟻達は人間に対ししびれをきらしていました。
このままでいいのか?と一匹の蟻が言います。
どうしようもない。
結局それが答え。

だがある時のことだ。妙な蟻が妙なことを言い出しました。
『ひとつだけなら方法がある』

その妙な蟻が言うには、一匹の蟻だけなら人間にできるという話です。
蟻達はよろこびました。たとえ一匹であろうとも人間になれるのなら、復習ができるではないか!
しかしその方法を話した妙な蟻だけは乗り気ではありませんでした。

そして蟻達は集まりました。かなりの数の蟻です。今日ここで一匹の蟻が人間になれる。そして復習ができる。
人間になる蟻はもう決まっていました。優秀な働き蟻です。
妙な蟻は言いました。
『みなさん彼でいいのですね?信頼できる蟻なのですね?』
他の蟻は彼を信用していました。誰も否定する者はいません。
妙な蟻はすこしうなずいてから選ばれた蟻にふれました。

するとその蟻はみるみる大きくなり、人間となりました。
妙な蟻はそれを見届けると巣へと帰って行きました。
他の蟻は歓声をあげています。
人間となった選ばれた蟻は笑っています。

そして歓声をあげている蟻達に向かい、足を振り落としました。
何匹が死んだでしょう。
そのあとにも何回も何回も踏みつけました。
生き残っている蟻達はいそいで巣へ逃げました。
『どういう事だ!心まで変わってしまうのか!?』
とある蟻はいいました。
妙な蟻は答えます。
『いいえ。彼は彼のままです。』
他の蟻は不思議そうに聞きました。
『では何故?』
妙な蟻は言いました
『彼はもう蟻ではありません。人間です。我々の憎むべき人間です。蟻のまま大きくなっていたら違ったのでしょうけどね』

一匹の蟻が巣から出てみました。

彼は人間と戯れ紅茶をすすっていたのでした。

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