…コ……
別にHな声が聞きたいわけじゃないけど、深夜に聞こえてくる音はそういう可能性もある。
私は何となくドキドキしながら、盗聴器の機材のスイッチを入れ、周波数を読んでいく。
この微妙な感覚が辞められない。
ザザザ…ザ…ザ…
…え?
また…聞こえた?
ギクリとして振り返ったが、薄暗い玄関に変化はなく、覗き穴だけが真珠のように光って見える。
耳に直接、囁くような声だった。
さっきと同じ…。
たった一言。
『コ』
でも今回はノイズかも。
気を取り直して、もう一度…。
…ザ…アアア…ア……ザ…
…?
おかしいな…こんなにノイズが入るなんて…不良品かな…。
ザ…ザ…アゥ…アア…
…やっぱりアレの音か…
呻くような、細く、くぐもった声…。
若い夫婦だし子供いないんだから、仕方ないけどね。
ザザザ…ニキ……テ…ザザ
余りにも雑音がうるさくて、私は思わず顔をしかめた。
なんなのよ!
値切ったのが悪かったのかな…。
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