Mind Adventure 31
気持ち次第で、何でもできる。
そう思っていた時があった。
俺は、天才なんだと。
左足の大腿部の痛みに顔を顰め、それとともに我に返る。
確かに、人より優れていると言われるようなような点は、多いかもしれない。
だけれど、それは違った。
自分自身への己惚れこそが、半端な才気の証しだと、どうして誰も教えてくれなかった。
何故気付けなかったんだろう?
―――堕ちていく。
二つの意味で。
本当なら、怪我なんかをするような相手じゃなかったはずだ。
何が変わった?
―――全て、が。
自答を他人の声のように感じる。
かしゃん。
金属音が、空気を震わす。
長い間握りしめていて、白く冷たくなった手が、自分の頬に触れる。
親鳥の元の小鳥に似た心地よさに身を委ねながら。
堕ちる。
墜ちていく。
もっと。もっともっともっと。
深くまで…………
急激な魔力の高まりを感じて、妖需が飛び退くのと床がはじけ飛ぶのは殆ど同時
だった。
「妖需!!何処にいる?」
「10時方向!そんなに遠くない!」
こういう時には、魔力の探査能力が高い妖需が追尾の役目をする。
道の相手を前に、初めに動くのは一番体が強くできているディル。
そんな役割分担が、自然と出来上がっていた。
何時もの如く、走り出したディルを黒い影が追い抜いた。
漆黒の法衣が、半開きのドアの隙間から滑り込む。
直ぐに上がった掠れたような悲鳴に、妖需らははっとなった。
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