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月への階2

[215]  一月  2008-08-07投稿
それはよく晴れた満月の夜だった。
ふと真夜中に目が覚めた。開けっ放しの窓から、煌々と青白い月明かりが少女の顔を照らしていた。
ひんやりとした外気が音もなく入り込んでくる。
少女は窓を閉めようとして、思わず目を見開いた。
階段が伸びている。しかも少女のいる窓辺から、真っすぐ月へ向かって。
こんなことは初めてだ。いつもはだだっ広い場所にぽつんとあるだけなのに、こんな所に現れるなんて。
階段は無言のまま、まるで少女を促すようにキラリと光った。
月光を浴びて、夜空にぼんやりと白く浮き上がっている。今までで一番、はっきりと輪郭が見て取れた。
見ている内に、何だかどこまででも上っていけそうな気がしてきた。
今夜は風もない。恐れず上り続けたら、あの月まで行けるかもしれない。
その時、もう一度階段がキラリと光った。
「行くしかない…」
少女はそっと階段に手を掛けた。そこからはまるで吸い込まれるように、すいすいと上っていった。
その先には、夜空にぽっかりと大口を明けた月が待っていた…――

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