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星の蒼さは 106

[478]  金太郎  2008-08-08投稿
三体の死体が純白の床に転がっている。
アキはもう絶叫する事も、その場から逃げる事も出来なかった。
三人を葬ってなお、アポロは平然と立っている。

「あり得ん…大人の〔能力者〕でも吸収しきれない〔色〕だと?」

信じられないという試験官の顔は驚愕と恐怖で引きつっている。

「ね…」

誰もが押し黙っている室内に、アポロの声が響く。
口調は元に戻っていた。

「ヒッ!」

たった一人生き残った研究員は小さく悲鳴をあげた。次は自分とわかったのだろう。

「ご免なさい!自由にしてあげます!いえ、させてください!だから命だけはどうか!」

アポロの足首に縋り付き、額を床に打ち付けて命乞いする大人。
だが、アキはそれをみっともないとは思わなかった。

もし、アポロの目が自分を見据えていたら、アキもあの様にしていたに違いない。


「自由?」


明るい純白の光のなか、アポロは男の言葉を聞き返した。

「家に帰して差し上げます!お金も…」

「いらないよ」

男が終わらないうちにアポロは遮った。「は?」と返す男にアポロは信じられない事を言った。


「僕を研究しろ」


場が凍り付いた。


「聞こえなかった?……名誉だろ?人を殺せる〔力〕だよ」

イライラした様子のアポロに男はすぐさま答えた。

「は?はい!わかりました!そうさせて頂きます!」

「アポロ!?」

アキは叫んだ。信じられない。

「何を…言って」

キッとこちらを睨んだアポロに気圧され、最後まで言えなかった。

真っ赤に光るアポロの目に再び怒りが灯る。

「ぁ…ごめんッ」

物凄い速さで伸びてきた右手に喉を掴まれ、アキは悲鳴もあげられなかった。

「やめ…ッ、アポ…ロ…許して…お願…い…苦しい……よぉ」

顔を真っ赤にして泣きながら懇願するアキの顔を満足そうに舐め回すように見ながら、アポロは言った。

「アキも連れていく。藍姉さんは自由にしてやれ」

アキは思った。

死ぬ恐怖を植え付けられ、今、首を締めあげられて死ぬ苦しみを教えられたアキは、もう抵抗出来なかった。

ああ、自由を失ってしまった。

その喪失感だけがアキの心にポッカリと穴を穿った。

「名前は僕がもらう。お前はもうアキじゃない」

顔が歪むほど笑顔を見せたアポロは暫し考え、そして無慈悲にアキの名前を奪った。

「〔ルナ〕…お前は〔ルナ〕だ」

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