罪はやがて闇となる?
田舎町にある小さな飲み屋。味よりも値段に引かれて訪れる客が多いその店の宴会席には、かつて三年間同じ時間を過ごした級友が集っていた。
仲の良いクラスだった。喧嘩はそれなりにあったけれど、すぐに打ち解け派閥を作らず、取り立てて問題もなく卒業した。
就職した者もいれば進学した者もいた。卒業してから成人するまでは皆、自分の生活に慣れるまでお互いあまり連絡は取り合わなかったが、成人式に顔を合わせた途端昔を懐かしみ、今では毎年こうして集まっている。
佳代ももうすぐ二十五歳になる。友人達と交わす会話はいつしか趣味や勉強の話しよりも、仕事場の愚痴や家庭の話題になっていた。
上司のセクハラに困っている、旦那が浮気しているかもなど昔に比べひどく現実的だ。
女子の会話など誰と誰が付き合っているや好きな人の事でもちきりだった。
中には年上の恋人と性関係を結んだなどと自慢気に話す友人もいた。そんな彼女も今では一児の母になり家に収まっている。
時代の流れを感じながらも佳代は年に一度開かれる同窓会を心から楽しんでいた。
十時を回り酒が人を饒舌にさせる頃、佳代の向かい側に座っていた友人が視線を送ってきた。
昔と変わらず深刻な話しがある時は躊躇う癖に佳代は微笑み、前のめりになり小声で呼びかけた。
「絵美、どうしたの」
案の定絵美は黒目を左右させ、何から話せば良いか考えているようだ。
手元にある水に口をつけると佳代の顔色を伺いながら絵美ははっきりした口調でこう言った。
「一週間前、蓉子を見かけたの」
その瞬間佳代の顔から笑みが消えた。
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