奈央と出会えたから。<193>
あたしは、リビングのソファーに腰を掛けた。
聖人のお父さんは、あたしが来る直前まで飲んでいたらしく、
テーブルの上には、焼酎の瓶と、グラス、
焼酎を割る、番茶が置かれていた。
『聖人。お前、奈央ちゃんに茶くらい出さんかい!!
さ、奈央ちゃん。
なまら汚い所やけど、ゆっくりしてってな。』
『あ‥‥は、はいっっ。ありがとうございますっっ!!』
ぷ‥‥ぷぷ。
北海道弁と関西弁のコラボですか。
『親父。まだその変な関西弁抜けねぇのかよ。おかしいぜ。そのしゃべり。
なっ?!奈央?!』
ぷぷぷ‥‥‥。
や‥‥やだ。
あたし‥‥。
ツボにハマっちゃったかも‥‥‥。
どうしよっっ。
あたしは必死に笑いたいのを堪えたんだ。
『お、おい。何笑ってんだよ?!奈央。』
聖人は、いいからあっち行って!!
聖人のお父さんに笑ってるのバレちゃうじゃん。
『うちの親父は、元々神戸の人間だからな。
もう小樽に移り住んで15年も経つのに、てんで関西弁が抜けねぇでやんの。
ほい。ミルクティー。』
聖人は、あたしに暖かいミルクティーを入れてくれた。
そっか。そうだったよね。
聖人の家に初めて来たトキ、
聖人のお父さんとお母さんの“恋の話”、
聖人から、いっぱいいっぱい聞いたんだ‥‥あたし。
『聖人。お前、親の俺にそんな、馬鹿にした口利いて、ただで済むと思とんか?!』
聖人のお父さん、酔ってるのかな。
でも、見たカンジ、そんなに酔ってる風には見えなかったんだけど。
『何だよ。しゃべりが変だから変だって言って悪ぃかよ?!
いちいちうっせーよ!!』
嫌だ。親子ゲンカが始まっちゃったよ。
気まずい〜〜!!
『奈央ちゃん。コイツ10歳まで寝小便しとったんやで。』
聖人のお父さんが、ニヤニヤしながらあたしに言った。
『こ‥‥このっっ。よっ余計なコトを‥‥。くそ親父っっ!!』
『ハハハハハ。お前が悪いんじゃ。
親を茶化しやがるから。』
聖人のお父さんは笑ってるケド、
聖人は黙っちゃった。
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