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星の蒼さは 108

[468]  金太郎  2008-08-14投稿
「なんか…耳が…?」

ほんの少し、唇が触れるか触れないかというところでハルは起きた。

慌てて顔を引っ込めた。

間に合ったらしい。

「!!アキ!目が覚めたのか!?」

アキと目が合ってすぐに大はしゃぎするハル。
この様子だと、本当に藍との会話は聞かれていないらしかった。

「うん。おはよ」

「水は!?飲む?大丈夫か?寝違えたり…」

「大丈夫だよォ」

「よかった!よかった!……もう一生起きないかと思った…」

急に深刻そうな顔でハルは続ける。

「アキ、ゴメンな。戦争なんかに巻き込んで…こんな…」

「だから、もう大丈夫。私は元々月の軍人だし、私が一緒に戦いたいって言ったのよ?迷惑かけてゴメンね」

「ああ」

照れ隠しで、いつも以上にアキは喋った。

「ハル、今、戦いはどうなってるの?」

「よくわからないけど、かなりヤバいみたいだ」

「……」

「…アキ。俺はもうアキを戦争に巻き込みたくない。だから逃げてくれ。アキは地球の軍人じゃないし……」

「嫌」

反射的に出てしまった。

え?とハルが聞き返す。

「そんなの嫌!」

つい大声が出てしまう。だが、譲れない。

「私は確かに月軍人だよ。今は違う。一緒に戦ったじゃない!?一緒に空翔んだでしょ?逃げて逃げて、全部なくしちゃうのはもう十分」

逃げて逃げて、自分は名前を奪われた。
逃げて逃げて、自分は友達を失った。
沢山だ。

今逃げたら今度は必ずハルをなくしてしまう。

「またいけるよ。二人でもう一回空を翔ぼう?」

アキはハルの手をとり、全て話し尽くした。

そして、これは自分への言葉。

「逃げないで」

ハルはアキを見つめ、しっかりと頷いた。







「出撃命令が出ました」

通信兵が悲痛な面持ちで滝川を見た。

「そう」

「勝算はありません。行くのですか?」

隣の荒木も状況を絶望視している。

戦力差歴然。くたびれた【零戦】二機でいったい何ができようか。

友軍はすでに中国軍のワシントン市内への侵攻を許している。
どうにもならない。

あの【天使】がもう一度戦場に舞い降りてきたら…そう思った。
だが、あの二人は…
滝川は最後になるかもしれない出撃命令を出した。

(艦長!俺達も出ます!)

彼女を驚かせたのはコクピットに座る、パイロットスーツに身を包んだアキとハルの姿だった。

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