雨色の心
世界を嫌いになってしまいそうだった。
雨の中を自転車で走っていた。
空はどんよりと曇っていて、まるで私の心そのものみたいで。
私は沈黙したままペダルをこぐ。
人が。
あまり好きではないと自覚してしまった。
いや、違う、やっぱり好きだ。
心のどこかで、そう叫んでる自分もいた。
雨はまるで、私を責めるみたいに降り注ぐ。
でもそれが、なぜか心地よくて。
頬に跳ねる雨粒は、慈雨のように私の心を湿らせていく。
カラカラに干からびた空っぽの心を。
雨が満たす。
心地よくて、爽やかで。
いつの間にか、嫌なこと色々、頭のすみに小さく小さくなっていく。
ただ、雨の中走ってる自分が、好きだと思った。
やっと好きだと思えたんだ。
私は全速力で自転車をこぐ。
もっと、もっと速く!
けぶる景色は、灰色で、青みがかっていて、汚くて、でも息を呑むくらいきれいで。
ずっとずっと続けばいい、この雨の世界。
私を包み込め、そして雨と一つになってしまえ!
願いながら走った。
――今なら、この世界を好きでいられる。
そんな気がしたんだ。
感想
感想はありません。