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透明少年〜始まりの朝〜

[1130]  hiro  2008-08-16投稿
「もう、消えてしまいたい。」正男は、そっとつぶやいて眠りについた。
正男は、十歳の小学生。頭はかなり良いが、意地悪で、生意気、そのせいか、友達もいない。
両親は昨年、交通事故で死んでしまった。この時、正男は、涙を見せなかった。
今は、親戚のおばさんの家で二人きり、寂しい生活を送っている。

すっかり陽が昇り、眩しい朝がやって来た。正男は耳障りな目覚ましの音に目を覚まし、時計を見た。
「いけねえ、遅刻だ。」
メガネを掛けて、急いで鏡の前に立った。そのまま、まばたきもせず、三分ぐらい立ち尽くした。
正男はまっさおになった。
「メガネとシャツが宙に浮かんでる、信じられない。」
と、呪文を唱えるかのように何度も呟いた。
そう、そこにはまるで、透明人間のような自分の姿があったのだ。
とりあえず学校にだけは休むことを連絡しようと、電話を掛けた。
「もしもし、先生?正男だけど。」
「ああ、正男君か、なんだい?」
「今日は体の調子が変だから休みます。」
すぐに電話を切った。
「ウソじゃないもんねー。」
と嬉しそうに言い、こうも言った。
「どうせ学校にいってもしゃべるやつもいないし、つまんないし、ちょうどいいや。」

正男はおばさんに学校へ行くと言ったきり、家には戻らなかった。

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