魔王と私
ゴロゴロっ! 朝からずっとこの調子だ。僕はとてつもなく憂鬱な気分だった。今日は何をやったって何故か上手くいかない。朝ごはんを魔王様に運ぶという仕事があるのに寝坊して挙げ句のはてひっくり返しちゃうしトイレ掃除してたらいきなり水が溢れてきて責任とらされるし窓掃除したら窓割るし。結局今日は謹慎をくらって部屋に戻って来た。といってもしょせん下僕の部屋。なんにもないのでただただ外を見てるしか出来ない。そしてため息を一つついてまた外を眺める。相変わらず紫色の雷が雨水すらも巻き込んで空を駆け巡っている。恐い ふとそう感じてしまい彼は窓のカーテンを閉めた。なんとなく目を背けたかったのだ。しかし音は聞こえる。ひたすらに大きくなっていく。それにつれて自分の鼓動も早く速くなっていく。耐えきれなくなり彼はベッドの下から古びた木箱を取り出し一息ついてから中を開けた。そこには綺麗に手入れされたウ゛ィオラがあった。少年はそれを手に取り音を紡ぎ出した。澄んだ音色が辺りに響きわたった。 「ふぅ〜。やっぱり落ち着くなぁ。」 彼は穏やかな表情で再び奏で始めた。しかしその美しい音色はけたましい落雷の音でかき消された。 「ぅ、わっわあ?!なん?なんだ?」 少年は慌てて外を見た。どうやら大きい雷が落ちたようだ。しかしそこから見えるのは煙だけではなかった。なんとそこには少女が立っていた。そしてフラ〜と倒れた。 「えっ?!ぅそ!えと助けなきゃ!って僕今謹慎中だから出れないじゃん!鍵閉められてんじゃん!」 人は追い詰められたら何をするかわからない生き物だ。かれも例外ではないらしくいつもの穏やかな彼からは考えられない行動をとっていた。割ったのだ。窓ガラスを。椅子で。そして少年は雨と紫色の雷の中に駆け出して行った。
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