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桜の木とともに プロローグ

[626]  キョウスケ  2008-08-22投稿
春の季節、僕は家の前にある、桜の木を毎日見ては、ピンク色の花びらに見惚れていた。
春夏秋冬の中で、僕が一番好きな季節は、もちろん春だった。桜の木は、毎日のように僕を見ては
「また、会えましたね?」と言ってくる気分にさえ感じられる。
この桜の木は、僕が生まれてくる前からあるのだか、周りを見ていても、この桜の木だけが、一番輝いて見えたのは、子供の思い出だからななのだろうと、今になって思う。当時を思い出していると、桜の木もそうなのだが、一つ気に留めてしまうことがあった。
私がまだ、小学生だった頃、私の通う学校で、とても不思議な女の子いたのを憶えている。その子は、別に一人ぼっちでもなく、友人も何人かいたであろうが、一人でいる時間を、私は多く見ている。その女の子は、周りの女子を見ていても、なぜか気になる事をしていた。
ある時、私はその子に、こう話し掛けた。
「木ばかり見て、何かわかるの?」
その子はニコッと笑って、「この木は、立派な桜を咲かせる木なの」
「桜が好きなの?」
「だって、私の名前と同じ名前の木だから、桜は大好きよ?」
私はとっさに、その子の名前を聞いてみたくなった。君の名前は?と。
すると、私の思いが通じたのか、自分から名前を言い出した。
「私は野崎 桜。あなたは?」
「黒田 大和」
そう、答えていたと思う。照れていた私に、桜は急に、
「私の命は、あと二、三年しかもたないの」
自分の事を言ってきた。
「えっ?」
私は驚くが、彼女はクスクスと笑いながら、
「うそだよ。だって私、夢もあるのに簡単に死にたくないもん」
サラリと話を終わらせた。この時、私は彼女の命が、残りわずかだという事は、まったく気付きもしなかった。
そんなふたりをよそに、桜の木は、間もなく満開を迎えようとしていた。

一枚、一枚、昔の写真を、私は見ていた。息子が、
「お父さん、桜の写真しかないよ?」
手にとっては、がっかりしている。
「昔は、お父さんの家の前に、でっかい桜の木があってな、おじいちゃんに写真を撮って貰ってたから、こんなにあるんだよ」
説明をする私をよそに、息子が一枚の写真を見せてきた。
「じゃあ、この写真は?」それを見た瞬間、私自身の時間が止まっていた。なぜなら、その写真に写っていた女の子は…………

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