彼の想い
「何かをしようと思ったわけじゃない。ただ、描きたかった。」
彼はそう言って、彼にとって最後の作品に手をかけた。一筆描くごとに、白いキャンパスに色がつく。私はそれをじっと眺めていた。「今度は、何?」
「分かんない」
彼はいつもこうだった。多分、本当に決まってないんだろう。書き方に規則性がない。
「楽しい?」
「全然」
訳の分からない人だ。それでもまだ描き続けている。
「じゃあ、止めたら?」
「駄目」
いつもだった。『嫌』ではなく『駄目』。何が駄目なのか、本人にも分かっていない。私にも分からないから、大きく溜め息をついて、聞くのを諦めた。
そして30分後。
「できた」
色がうまったキャンパスから離れながら見る。絵は、花畑だった。青空が広がっていて、一本道の回りを囲むように花が咲いている。
「何コレ」
私は期待をしないで返事を待った。
「…天国」
珍しく、答えがあった。
「俺が行く、天国」
痩せた顔が言う。
「俺は生前の行いがいいからこの道を歩けるんだ」
笑顔でその絵を眺め続けた。
彼はその後亡くなった。
あの時彼は何故あの絵を書こうと思ったのか、私には分からなかった。ただ、私の中に埋まらない穴ができてしまったようで、それだけがすごく、
彼はそう言って、彼にとって最後の作品に手をかけた。一筆描くごとに、白いキャンパスに色がつく。私はそれをじっと眺めていた。「今度は、何?」
「分かんない」
彼はいつもこうだった。多分、本当に決まってないんだろう。書き方に規則性がない。
「楽しい?」
「全然」
訳の分からない人だ。それでもまだ描き続けている。
「じゃあ、止めたら?」
「駄目」
いつもだった。『嫌』ではなく『駄目』。何が駄目なのか、本人にも分かっていない。私にも分からないから、大きく溜め息をついて、聞くのを諦めた。
そして30分後。
「できた」
色がうまったキャンパスから離れながら見る。絵は、花畑だった。青空が広がっていて、一本道の回りを囲むように花が咲いている。
「何コレ」
私は期待をしないで返事を待った。
「…天国」
珍しく、答えがあった。
「俺が行く、天国」
痩せた顔が言う。
「俺は生前の行いがいいからこの道を歩けるんだ」
笑顔でその絵を眺め続けた。
彼はその後亡くなった。
あの時彼は何故あの絵を書こうと思ったのか、私には分からなかった。ただ、私の中に埋まらない穴ができてしまったようで、それだけがすごく、
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