白い家 3
私の背丈ほどもある雑草を掻き分けながら、ネムを捜す。
茅(かや)で手を切り、ピリピリと痛む。心臓は激しく血液を押し出しているかのよう…緊張で吐き気さえ感じる。
それでもネムを諦められなかった。
あれがなくなれば…私の存在意義が消えてなくなるとでもいうように。
ない…ない…ない!
これだけ探して、ないということがあるだろうか
私は汗だくになって、屈んだ腰を伸ばし…そしてぎょっとした。
目の前に、赤いドアがあったのだ。
這いつくばって捜すうちに、こんなところまで来たというのか?
私は思わず後ずさっていたが…その時、ドアが細く開き、隙間から一瞬、ネムが見えた気がした。
ネム?
なぜ…まさか…。
私はその刹那のみ、恐怖を越えて行動していた。
細く開いたドアの隙間に手をかけ、大きく足を踏み出していたのだ。
扉は背後で閉まり、私は騙されたことに気付いた
餌につられた雀が籠に閉じ込められた時のように
笑顔の大人に体を触られた時のように。
すうっと足から力が抜け出し、奈落の底に吸い込まれていく。
私は試す前から気付いていた。
私はもう…出られない。
それでも半狂乱になってドアを叩き、引っ張り、押す。
薄暗い、かび臭い玄関で私はあらん限りの力で叫び、泣き、手を腫らしていた。
暫くそうしていて…私のなかのパニックの波が、ようやく静まっていき、泣き濡れた目を擦った。
広い玄関に靴が二足並んでいる。
一つは小さな女の子のもので、真っ赤な花のついたかわいらしい靴。
もう一つは、大人の女性の靴…血のように赤いピカピカのハイヒールだった。
私が産まれる前からある廃墟に、どうみても新しい二足の靴がある。
見渡してみても、埃臭さはあるものの、余りにも綺麗だった。
テレビの肝試しなんかでみるような、汚らしいゴミや落書き等は一切なかった。
誰か住んでいる?
そんな筈はない…。
いや、でも…。
確信が持てずに、私は玄関で靴を脱いだ。
そうすることが正しい気がしたのだ。
ゆっくり、私は家の内部へと進んで行った。
茅(かや)で手を切り、ピリピリと痛む。心臓は激しく血液を押し出しているかのよう…緊張で吐き気さえ感じる。
それでもネムを諦められなかった。
あれがなくなれば…私の存在意義が消えてなくなるとでもいうように。
ない…ない…ない!
これだけ探して、ないということがあるだろうか
私は汗だくになって、屈んだ腰を伸ばし…そしてぎょっとした。
目の前に、赤いドアがあったのだ。
這いつくばって捜すうちに、こんなところまで来たというのか?
私は思わず後ずさっていたが…その時、ドアが細く開き、隙間から一瞬、ネムが見えた気がした。
ネム?
なぜ…まさか…。
私はその刹那のみ、恐怖を越えて行動していた。
細く開いたドアの隙間に手をかけ、大きく足を踏み出していたのだ。
扉は背後で閉まり、私は騙されたことに気付いた
餌につられた雀が籠に閉じ込められた時のように
笑顔の大人に体を触られた時のように。
すうっと足から力が抜け出し、奈落の底に吸い込まれていく。
私は試す前から気付いていた。
私はもう…出られない。
それでも半狂乱になってドアを叩き、引っ張り、押す。
薄暗い、かび臭い玄関で私はあらん限りの力で叫び、泣き、手を腫らしていた。
暫くそうしていて…私のなかのパニックの波が、ようやく静まっていき、泣き濡れた目を擦った。
広い玄関に靴が二足並んでいる。
一つは小さな女の子のもので、真っ赤な花のついたかわいらしい靴。
もう一つは、大人の女性の靴…血のように赤いピカピカのハイヒールだった。
私が産まれる前からある廃墟に、どうみても新しい二足の靴がある。
見渡してみても、埃臭さはあるものの、余りにも綺麗だった。
テレビの肝試しなんかでみるような、汚らしいゴミや落書き等は一切なかった。
誰か住んでいる?
そんな筈はない…。
いや、でも…。
確信が持てずに、私は玄関で靴を脱いだ。
そうすることが正しい気がしたのだ。
ゆっくり、私は家の内部へと進んで行った。
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