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飛行機雲?

[171]  2008-08-28投稿
その日は、朝からどしゃ降りの雨で、傘をさしていてもずぶ濡れになった。
わたしは、前の日からの生理痛で、気分は最悪だった。薬で痛みを押さえている分、かえってイライラしていた。サヤとマイの気遣いさえうっとうしい。
李遼は、今朝も上履きをはいてこなかった。
いつもの事。気にする事はない。教室の後ろの隅で、問題児の木場とその仲間が、李遼を時々見て何か言ってるのは、皆、知っている。
でも、どうだっていい。
当の李遼が無反応なんだから、誰かが口出しする事でもない。
李遼の席は、わたしの斜め前。あいつは、席に着くと、鞄から教科書を取りだし、ページをめくり出した。
何かが、わたしの神経に爪を立てた。
李遼の靴下は濡れていた。
無造作に投げ出された足の先に濡れた靴下が貼り付いて、あいつの足の指の形をくっきりと浮き出させていた。
わたしには、その指が紫色に変色している事までわかってしまった。
春とはいえ、まだ、冷たい雨がその指を凍えさせ、失われた感覚を取り戻そうとうごめいている。
今にも指から悲鳴が聞こえそうで、それが、無性にわたしを苛立たせた。
「靴下、脱げば。」
大声で言ったつもりはない。
けれど、発された言葉は教室にいる、何人かの耳に届き、そして、取り戻す事はできない。木場達も、聞き逃す訳がない。
サヤとマイが、固まっている。李遼が、わずかにわたしを見た。
「脱げば、だってよ。」
「エロッ。ヌ・ゲ・バ?」
「おい、李、全部、脱い
じゃえば?鈴木が、お前
の裸見たいってよ。」
木場達はゲラゲラ笑っている。
「ヌ・ゲ・ヌ・ゲ!」
「ヌ・ゲ・ヌ・ゲ!」
ああ!
うるさい!
ここにいる奴、みんな消えて無くなれ!幼稚な頭で、憎まれ口しかたたけない男共!わたしの側でドン引きしている女子達も、聞こえないふりして教科書に視線を戻した李遼も!
「聞こえなかった?濡れ
てるから、靴下脱げって
言ったんだけど!」
わたしが投げつけた言葉は、李遼の背中に吸い込まれていった。
「うるさいぞ!朝っぱら
から何やってる!」
担任の怒鳴り声がして、教室の空気が変わった。
誰も、何も言わず、席につく。さっきまでの喧騒が嘘のよう。
空気の真芯に、小さな悪意が残り、こんな些細な事で日常は日常でなくなっていくのだろう。多分。

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