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飛行機雲?

[126]  2008-08-29投稿
学校帰りに弟のキヨを迎えに行くのは、遠回りになる。
保育園は商店街を抜けた、家とは真反対の高台の住宅地にある。
何でこんな事、毎日わたしがしなくちゃならないの?わたしの心は、いつも不満だらけだった。
ただ、保育園に行く途中にひとつだけ、わたしのお気に入りの場所がある。
そこは、ありきたりの遊具がいくつかあるだけの小さな公園だけど、季節の花が周りを彩って、気持ちがやわらぐ。
鉄棒の横に木のベンチがあり、今はその後ろで紫陽花の花が青く咲き誇っている。
キヨを連れて、来た道を戻る。キヨは保育園で習った歌を歌いながら、ピョンピョン跳ねる。手をつないでいるので、引っ張られて転びそうになった。
「キヨ、危ないよ。」
「危なくないもーん。」
キヨはわたしの言う事なんか聞きはしない。きつく叱ると、火がついたように泣き出し、いつまでも泣き止まない。でも、どんなに具合が悪くてもこれはわたしの役目。
母が迎えに行くときには、もうキヨしか残っていないので、キヨはひどく不機嫌になる。そして、
次の日、保育園にいくのを嫌がるのだ。
もう、なんか本当に面倒臭い。
ため息を着いたわたしの横を、自転車が通り過ぎた。キュッとブレーキの音がして、公園の前で止まった。
「鈴木?」
李遼だった。
李遼はもう私服に着替えていて、いつもと感じが
違う。
「今、帰り?」
朝の事もあったから、気まずくて、黙って頷いた。
「オレ、商店街まで行く
から、そこまで乗せてっ
てやるよ。」
「えっ、いいよそんな。」
驚いて、断ろうとしたわたしの言葉にかぶせるように、キヨが、
「やった!」と言って自転車の荷台に手をかけた。
「キヨ!」
引き止めようとするわたしに、
「いいよ、ついでだし。」と言い、李遼は軽々とキヨを持ち上げ荷台に乗せた。それからわたしの鞄を何気無く取って、当たり前のように前かごに入れた。あまりにも自然だったので、わたしは逆らいも出来なかった。
「ちゃんとつかまってろ
よ。危ないからな。」
キヨにそう言うと李遼はゆっくり自転車を押して歩き出した。わたしは、李遼と並んで歩いた。
普通の事に思えた。わたしの目の横に李遼の肩がある。ちょっと長めの前髪が風に揺れる。ハンドルを握る手はわたしの手よりずっと大きい。
「偉いな、鈴木、毎日。」
李遼の言葉に、恥ずかしくてうつむいた。

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