白い家 4
玄関を抜けると、暗さが一層増した気がする。
私は鳴り響く心臓を押さえ、飛び出さないようにする為に指を口唇に充てていた。
これ以上入りたくない。が、出口を見つけなくては…。
すぐ目の前に階段がある上からは僅かな冷気が流れてくるようで、私はのぞきこみ…息を呑んだ。
1番上の段に、細い足が…。
誰…?
か細い声に弾かれるように、足は消えた。
もの音一つ立てず…しばらくしてバタン、と扉の閉まる音。
女の子だ。
あの靴の持ち主…。
私は夢中で駆け上がった本当に人が住んでいるのなら、私を出してくれるかもしれない…。
二階に上がると、すぐに一つの扉が目を惹いた。
それにはプレートが掛かっていた…「ゆり」
恐る恐る、ドアを叩こうとしたとき、一階から声がした。
どこ?
ゆりちゃん…どこ?
出てらっしゃい…
女性の声?
どうしよう?
歌うように呼ぶ女の声は近づき、微かに階段の軋む音が聞こえた。
いるんでしょ…?
わかってるわ…
いっそ出ていって謝ってしまおう!
私が扉から離れようとした、その時、にゅっと青白い腕がドアから突き出し…私はあっという間に真っ暗な部屋に引き込まれていた。
悲鳴を上げかけた口を、しっかりと手が押さえ込んでいる。
静かにして
私の耳に少女は囁き、私はズルズルと引っ張られた。そして壁に押し付けられる。
ここから絶対に動かないで。
でないと…喰われる
そう呟いて、少女は自らの氷のように冷たい身体を私にピタリと密着させた。
ギシ…ギシ…ギシ…
どこなの…ゆりぃ…ゆり…ママを困らせないで…
ギシ…ギシ…ギシ…
来る。
声が近づくにつれ、少女の身体が硬く、震えを増していく。
ゆり…ママを怒らせないで…ね、ゆりちゃん…
その声は背筋をそっとナイフで撫でられたように感じさせる、狂気を孕んだ声…。
叫んでいる訳ではない。むしろ優しいと言えるその響きは、ねっとりと身体中を這い回る。
私はぎゅっと目を閉じ、現実を遮断する努力をした。
声はもうすぐ側まで来ている…。
私は鳴り響く心臓を押さえ、飛び出さないようにする為に指を口唇に充てていた。
これ以上入りたくない。が、出口を見つけなくては…。
すぐ目の前に階段がある上からは僅かな冷気が流れてくるようで、私はのぞきこみ…息を呑んだ。
1番上の段に、細い足が…。
誰…?
か細い声に弾かれるように、足は消えた。
もの音一つ立てず…しばらくしてバタン、と扉の閉まる音。
女の子だ。
あの靴の持ち主…。
私は夢中で駆け上がった本当に人が住んでいるのなら、私を出してくれるかもしれない…。
二階に上がると、すぐに一つの扉が目を惹いた。
それにはプレートが掛かっていた…「ゆり」
恐る恐る、ドアを叩こうとしたとき、一階から声がした。
どこ?
ゆりちゃん…どこ?
出てらっしゃい…
女性の声?
どうしよう?
歌うように呼ぶ女の声は近づき、微かに階段の軋む音が聞こえた。
いるんでしょ…?
わかってるわ…
いっそ出ていって謝ってしまおう!
私が扉から離れようとした、その時、にゅっと青白い腕がドアから突き出し…私はあっという間に真っ暗な部屋に引き込まれていた。
悲鳴を上げかけた口を、しっかりと手が押さえ込んでいる。
静かにして
私の耳に少女は囁き、私はズルズルと引っ張られた。そして壁に押し付けられる。
ここから絶対に動かないで。
でないと…喰われる
そう呟いて、少女は自らの氷のように冷たい身体を私にピタリと密着させた。
ギシ…ギシ…ギシ…
どこなの…ゆりぃ…ゆり…ママを困らせないで…
ギシ…ギシ…ギシ…
来る。
声が近づくにつれ、少女の身体が硬く、震えを増していく。
ゆり…ママを怒らせないで…ね、ゆりちゃん…
その声は背筋をそっとナイフで撫でられたように感じさせる、狂気を孕んだ声…。
叫んでいる訳ではない。むしろ優しいと言えるその響きは、ねっとりと身体中を這い回る。
私はぎゅっと目を閉じ、現実を遮断する努力をした。
声はもうすぐ側まで来ている…。
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