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白い家 4

[612]  ゆうこ  2008-08-29投稿
玄関を抜けると、暗さが一層増した気がする。

私は鳴り響く心臓を押さえ、飛び出さないようにする為に指を口唇に充てていた。

これ以上入りたくない。が、出口を見つけなくては…。

すぐ目の前に階段がある上からは僅かな冷気が流れてくるようで、私はのぞきこみ…息を呑んだ。
1番上の段に、細い足が…。

誰…?

か細い声に弾かれるように、足は消えた。
もの音一つ立てず…しばらくしてバタン、と扉の閉まる音。

女の子だ。
あの靴の持ち主…。

私は夢中で駆け上がった本当に人が住んでいるのなら、私を出してくれるかもしれない…。

二階に上がると、すぐに一つの扉が目を惹いた。
それにはプレートが掛かっていた…「ゆり」

恐る恐る、ドアを叩こうとしたとき、一階から声がした。


どこ?
ゆりちゃん…どこ?
出てらっしゃい…




女性の声?
どうしよう?

歌うように呼ぶ女の声は近づき、微かに階段の軋む音が聞こえた。

いるんでしょ…?
わかってるわ…


いっそ出ていって謝ってしまおう!

私が扉から離れようとした、その時、にゅっと青白い腕がドアから突き出し…私はあっという間に真っ暗な部屋に引き込まれていた。

悲鳴を上げかけた口を、しっかりと手が押さえ込んでいる。

静かにして


私の耳に少女は囁き、私はズルズルと引っ張られた。そして壁に押し付けられる。

ここから絶対に動かないで。

でないと…喰われる


そう呟いて、少女は自らの氷のように冷たい身体を私にピタリと密着させた。


ギシ…ギシ…ギシ…


どこなの…ゆりぃ…ゆり…ママを困らせないで…

ギシ…ギシ…ギシ…

来る。

声が近づくにつれ、少女の身体が硬く、震えを増していく。



ゆり…ママを怒らせないで…ね、ゆりちゃん…

その声は背筋をそっとナイフで撫でられたように感じさせる、狂気を孕んだ声…。

叫んでいる訳ではない。むしろ優しいと言えるその響きは、ねっとりと身体中を這い回る。

私はぎゅっと目を閉じ、現実を遮断する努力をした。

声はもうすぐ側まで来ている…。





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