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モモザト[1]

[213]  せんいろ  2008-09-01投稿

突風が吹いた。

いや、ただの突風と言って良いものではないようだ。

スカートがめくれるとか、砂埃が目に入ったとか、
そういうものではなく。



一つの町が、一瞬にして吹き飛んだのだ。



綺麗な町だと思った。
赤や黄色のきのこ型の家々、
ほどよい活気のある商店街、
皆にこやかで、礼儀正しそうな住人たち。

それらが、家も商店街も住人たちも‥
その一瞬で、全てが吹き飛んだ。



今そこにあるものは、見渡す限りの黒い土。
他には何もない、ただ、黒い土だけだ。

そんな光景が、わたしの眼下に広がっている。

そう、眼下に。

「‥‥‥‥‥‥‥‥ぁ」

やっと気がついた。
なんということだろう。

わたしは宙に、浮いている。
しかも、身一つで、だ。

「‥‥‥‥‥!!」

―って!落ちるっ‥!

私は咄嗟に目を閉じた。









身体がびくんっとなって目が覚めた。

「‥‥‥‥‥‥あー」

夢だ。悪い夢。

しばらくぼーっとベッドに横になっていたが、ふと寝返りをうって時計を見る。

6時ジャスト。

いつも通り、夜にきちんと寝たのだから6時というのは午前のことだろう。

「えーと‥何日だっけ‥」

寝起きの思考が正常に働いているなら、9月1日。

普通の高校2年生の、2学期初日だ。

「起き‥起きぃ‥」

寝起きは苦手だが起きることにする。

よたよたと1階に降りたところで、異変に気付く。

静かすぎる‥。

ああ、今日は早く起きたから、両親も姉もまだ寝ているんだろうと、ぼーっと考えた。

しばらくただ座っていたが、誰も起きてくる気配はない。

少し考え、わたしはもう一度2階へ上った。


両親がいるはずの部屋のドアをそっと開ける。
まだ起きていないのならここにいるはずだ。

そっと覗くと、ベッドの布団は畳まれカーテンは開いている。
朝の陽射しで少し暑そうなくらいだ。

「いない‥」

わたしは額に汗を浮かべながら、すぐに姉の部屋の扉を開けた。


2階には誰もいなかった。


「なん‥で?」

出掛ける用事など聞いていない。



わたしは弾かれたように1階へ駆け降りた。

狭いリビングを走り抜けその奥の和室の扉を乱暴に開ける。





狂ったのは、わたしか。

いや、世界の方だろう。




和室の真ん中に背を向け、
猫だか犬だか熊だかが混ざったような、一匹の獣が‥



お茶を啜っていた。


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