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奈央と出会えたから。<208>

[541]  麻呂  2008-09-01投稿

『北岡。何故、お前はそんなに問題ばかり起こすんだ?!』


再び、こちらに向き直った渋川が聖人に言った。



聖人は、つい今までタツヤに向けていた鋭い眼光を、今度は渋川へ向けていた。


クラスメイト達は皆、事の一部始終を見ていたクセに、



まるで、何事も無かったかの様に、シラケていた。



誰も、聖人のコトを庇う者はいなかった。



酷い――



酷いよ‥みんな――


ずっと――



さっきから見ていたクセに――



あたしは、勇気を振り絞って渋川に言った。



『先生。悪いのは聖人じゃありません。先に手を出したのは、タツヤなんです。』



勇気を振り絞って言ったのに――



『ほほぅ。木下。お前も随分と色々な問題に関わる様になったじゃないか。

私の忠告を無視して北岡と付き合う、お前の気が知れないよ。

悪いが、北岡と付き合っている以上、お前の言う事を素直に信じる訳にはいかないね。

来年は受験だ。1年なんて、あっという間だぞ。

その時になって、内申点に響いた事を後悔し、嘆いても遅いのだからな。

よく考えて行動しろよ。』



渋川は、あたしにそう言うと、



ニヤッとニヒルに含み笑いをし、



今度は聖人に向かってこう言った。





『北岡。お前より先に手を出したのがタツヤで、お前が、あくまでも正当防衛だと主張するのであれば、それを証明してくれる人間は、此処にいるのか?!』



フフンッと鼻で笑いながら渋川は、



ずり落ち掛けた銀縁メガネを指で直した。



聖人は黙っていた。


さっきから渋川を睨み付けているだけで、



何も言い返さなかった。





『な‥なんでっっ‥‥。みんな見てたよ‥ね?!見てたじゃんっっ!!』



あたしは、クラスメイト達をぐるりと見回した。



みんな――



あたしと目を合わせない――



教室中は静まり返ったまま――



『ま‥やはり私の思ったとおりと言う事だな。ケガの具合を見てから、タツヤからも事情を聞く事にする。

北岡。義務教育で良かったな。

お前の父親にもこの事は連絡しておく。』

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