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奈央と出会えたから。<209>

[564]  麻呂  2008-09-01投稿

『ま‥やはり私の思ったとおりと言う事だな。ケガの具合を見てから、タツヤからも事情を聞く事にする。

北岡。義務教育で良かったな。

お前の父親にもこの事は連絡しておく。』



渋川が教室から出て行こうとすると、



さっきからずっと黙っていた聖人がこう叫んだ。



『おい!!親父は関係ねぇだろ?!

俺1人の処分でいいじゃねぇか!!』



聖人の言葉に渋川は足を止め、こちらを振り返った。



『何言ってんだ!!このガキが!!

お前1人の処分だけで、タツヤの御両親が納得するとでも思っているのか?!

しかも義務教育である以上、退学にする事は出来ないしな。』



渋川は最近様子がおかしい。



そう思っているのは、多分あたしだけじゃない。



“事勿れ主義”の“サラリーマン教師”だと言われていた渋川が、



何故か近頃、“熱血教師”ぶりを披露しているんだ。





あたしは、黙ってられなかった。



でも、渋川にあんな言い方されたら、



何も言い返さなくなってしまった。



でも――



黙ってられなかった。



黙って言われっ放しでいる事は出来なかった。





『先生!!前にも同じ様な事があったんです!!

その時は、結果的に大ごとにはならなかったから、先生は知らないとは思いますけど、

タツヤがサバイバルナイフで、いきなり聖人に切りかかろうとした事があったんです!!』



渋川は、あたしの言葉に一瞬目をまん丸くさせ――



そして、笑った。



高々と甲高い声で、あざ笑ったんだ。



『ハハハハハ。木下。馬鹿言っちゃ困るよ。

自分の彼氏が追い詰められてるのを、黙って見ていられないお前の気持ちも分からなくはないが、嘘はやめなさい。

そんな陳腐な作り話で私を騙す事が出来るとでも思っているのか?!』



『嘘じゃありません!!本当です!!

その時も‥‥その時も聖人がタツヤを制止しなかったら‥‥刺されていたかも知れないんですよ!!
先生!!嘘じゃありません!!』



大きい声で叫んだから――



声がかすれて、旨く話せなかった――

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