摩天楼 その5
レインコートの青年は廃車置き場に向かい、少女のいる車を覗いた。
後部座席に少女の姿がない。帰ってしまったのか。
青年がドアに手をかけると、突然目の前に「わっ」と声を上げて少女が現れた。青年は驚いて尻餅をついた。
少女が窓を開けてくすくす笑っている。青年はちょっと赤くなって立ち上がった。
「貴方の車? ごめんなさいね。占領しちゃって」
ゆうべは分からなかったが、少女の目は大きく、睫毛は長い。青年はゆっくり首を振った。
少女はまじまじと見つめる。青年は目を反らした。
「私はリリィ。君は誰?」
少女の目はらんらんとしている。青年は目を向けようとしない。
「…マーチ」
低い声だった。
「ねぇマーチ、暫くここに居てもいい?」
マーチは顔を上げた。普段の生活拠点はここではないし支障はない。
「構わないけど…」
「ほんと? 他に行く所がなくてどうしようかと思ってたの。ありがとう」
眩しくてまた目を反らした。
「やだーなんでまた反らすの」
とリリィはちょっと膨れてみせた。
後部座席に少女の姿がない。帰ってしまったのか。
青年がドアに手をかけると、突然目の前に「わっ」と声を上げて少女が現れた。青年は驚いて尻餅をついた。
少女が窓を開けてくすくす笑っている。青年はちょっと赤くなって立ち上がった。
「貴方の車? ごめんなさいね。占領しちゃって」
ゆうべは分からなかったが、少女の目は大きく、睫毛は長い。青年はゆっくり首を振った。
少女はまじまじと見つめる。青年は目を反らした。
「私はリリィ。君は誰?」
少女の目はらんらんとしている。青年は目を向けようとしない。
「…マーチ」
低い声だった。
「ねぇマーチ、暫くここに居てもいい?」
マーチは顔を上げた。普段の生活拠点はここではないし支障はない。
「構わないけど…」
「ほんと? 他に行く所がなくてどうしようかと思ってたの。ありがとう」
眩しくてまた目を反らした。
「やだーなんでまた反らすの」
とリリィはちょっと膨れてみせた。
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