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奈央と出会えたから。<219>

[572]  麻呂  2008-09-12投稿

『篠原先生。ユカが貧血で倒れちゃって‥‥。』



あたしがそう言うと、



篠原先生は、ユカをおぶっている聖人に気付いた。



『まぁ。それで、北岡君が、秋田谷さんを此処までおぶって来てくれたの?!

君、見掛けによらず優しいね?!』



『‥‥んなんじゃねぇよ。病人を放っておく訳にいかねぇだろ?!』



聖人は、ぶっきらぼうにそう言った。



『フフフ‥‥。そう。そうよね!!

じゃあ北岡君。

ユカちゃんをそこのベッドへ寝かせてくれる?!』



篠原先生に言われ、聖人は、おぶっていたユカを静かに下ろした。



『ユカ。あたしにつかまっていいよ。』


あたしが手を貸すと、



『大丈夫。ありがとう。』



ユカは、そう言って、ベッドの上に横になった。



『ありがとう。北岡君と木下さんは、もう戻っていいわよ。
後は先生に任せてね。』



篠原先生が、優しくそう言った。



胸の辺りまで長さのある、落ち着いたブラウンに染めたくせ毛風パーマのかかった髪を、



後ろでひとつに束ねている。



見た目は、品のある綺麗なお姉さん風なのに、



性格は、男っぽくてサバサバしている。


そんな、篠原先生があたしは大好きだった――



『先生。タツヤの怪我は、どんな感じですか?!』



聞かなくても、本当は、もう既に、怪我は大した事が無いと知っていたケド――


サチヨの話だけじゃ信憑性が薄いし。



さっき見た時は、ガーゼで隠れて見えなかったし。



『うん。タツヤ君の怪我も、出血の割には大した事無かったわよ。

顔中血だらけにしてたから、本人もびっくりしたんじゃない?!』



『ヘッ。あんなパンチで鼻を折られちゃ、たまったもんじゃないぜ。

こっちは手加減してやったのによ。』



篠原先生の優しい言葉にも、



聖人はその負けず嫌いな言葉で返してしまった。



よかった。



とりあえずは篠原先生の言葉に安心したあたし。



『聖人。ユカは少し保健室で休ませてあげよ。あたし達はもう行こうよ。』



『あぁ。そうだな。』

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