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別れる

[444]  はこもの  2006-06-06投稿
「別れたくないわ」彼女が言った。

「僕だって別れたくない」僕は言った。「でも別れなくちゃならないんだ」

僕らは浜辺に座って話していた。太陽はちょうど真上にあった。まだ6月だというのに、最高気温は30度を越えるらしい。

「何で別れなきゃならないの」彼女が聞いた。

「理由なんてないよ」僕はこたえた。「でもね、それでも別れなきゃいけない時っていうのがあるんだ。それが世の中なんだよ」

彼女は水平線の彼方を見つめていた。いったい何を考えているんだろう。波はとても穏やかだった。

「…なんで……」彼女がぼそっと言った。

なんで?僕にも、何故別れなくちゃならないのかは、わからなかった。でも別れなくてはならない気がした。そういう事だってあるのだ。

「家まで送るよ」すこし経ってから僕は言った。

彼女は頷いた。彼女の家までの数分間、僕らは話をしなかった。

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