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タイムテレフォン2−未来ー

[606]  hiro  2008-09-15投稿
「子供の頃に戻りたいなあ。」
と、嘆いているところで、チャイムが鳴った。
(ピンポーン)
軽快な音が、部屋を駆け回る。

「あの時は、よく怒鳴られていたなあ、翔太は。」
と、父の写真を見て兄は言った。
写真には、真面目な顔をした父と、へらへらした自分と兄が並んでいた。
「ああ、良かったな。親父もいたし。」
「そうだな、今はもうとっくにいない。」
父はもう82歳だ、生きていれば。
あの日、事故で死んでしまった。
「今は、オレたちが子供に怒鳴る番だな。」
「もうそんな歳かあ。って、お前子供もいないだろう。」
「兄さんもだろ?」
そこで兄は、少し顔を歪め苦笑した。隣の部屋へ歩いていく。
窓の外を見ると、すっかり夕陽が街を包んでいた。オレンジがきれいだ。
そしてその数分後、チャイムが鳴ったというわけだ。

軽快な音が、さっきの思い出話のせいで、さらに愉快に響く。
やっときたか、と思った。昨日頼んだ『タイムテレフォン』が届いたのではないかと。
心を弾ませ玄関の取っ手に手を伸ばす。気のせいか、心が震えている。
ドアを開ける。やっぱり、とにやけてしまう。
早速『タイムテレフォン』を使う。最新の技術を駆使した電話だ。しばらくして相手が出たので、話を始める。
「オレだよ、オレ。オレだろ?オレだよ。」
ついついはしゃいでしまう。大人気ないな、と思う。
「オレだろ?」なんておかしいな、と自分で笑ってしまう。そいえばあの頃、『オレオレ詐欺』ってのがあったなあ、と思い出した。どうでもいい。
「親父?何があったわけ?」
相手の声が震えているのが分かる。とにかく名前を言ってみる。
「オレだよ。分からないか?田崎だよ」
やっぱり興奮してしまう。息が声に混ざる。子供に戻ったみたいだ。
それにしても、この電話すごいなあ、と感心する。
過去に電話を掛けられるなんて。あの頃、こんなすごいもの想像もしなかった。
「そんなにはしゃいで、どうしたんだ?親父らしくないよ。」
父だと思われても仕方がない。今は、あの時の父と同い年だから。声も似ているだろうし。
「だからあ、田崎翔太だよ。やっぱ鈍いなあ、オレは!」
受話器の向こうから、疑問が流れてくるようだ、笑ってしまう。
ー続くー

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