よめしゅうとめ 1
「冷たっ!」
シャワーが急に冷水になった。急いで水を止める。
蛇口をもう一度ひねり、水を流し続けたが、待っても待っても冷たいままだ。
紗香は諦めて、残り湯を桶でひとすくいずつかけた。シャンプーが流しかけだった。
この日も紗香は家族の中で一番最後に風呂に入った。この家に嫁いできた初日から、それは決められていたことだ。
残り湯を頭から浴びるのは屈辱だった。ひとすくいかけるごとに、紗香は今まで受けてきた数々の嫌がらせを思い出さずにはいられなかった。
長い髪をやっとすすぎ終え、ボイラーを見に行くことにした。屋敷と呼ぶにふさわしいこの家は、外観は立派でも住みづらい。ボイラーは旧式だった。
寒さの厳しい2月の深夜。家族はみんな寝静まっている。
バスタオル一枚を体に巻き、台所横のスイッチを確認しにいった。
OFFになっている。
「あら、紗香さん?」
突然背後から声がした。姑の八重子だ。
「…お義母さま」
「ごめんなさい、まだ入っていたとは知らなくて」
すまなそうに、しかし、勝ち誇ったような不気味な笑顔だった。
つづく
シャワーが急に冷水になった。急いで水を止める。
蛇口をもう一度ひねり、水を流し続けたが、待っても待っても冷たいままだ。
紗香は諦めて、残り湯を桶でひとすくいずつかけた。シャンプーが流しかけだった。
この日も紗香は家族の中で一番最後に風呂に入った。この家に嫁いできた初日から、それは決められていたことだ。
残り湯を頭から浴びるのは屈辱だった。ひとすくいかけるごとに、紗香は今まで受けてきた数々の嫌がらせを思い出さずにはいられなかった。
長い髪をやっとすすぎ終え、ボイラーを見に行くことにした。屋敷と呼ぶにふさわしいこの家は、外観は立派でも住みづらい。ボイラーは旧式だった。
寒さの厳しい2月の深夜。家族はみんな寝静まっている。
バスタオル一枚を体に巻き、台所横のスイッチを確認しにいった。
OFFになっている。
「あら、紗香さん?」
突然背後から声がした。姑の八重子だ。
「…お義母さま」
「ごめんなさい、まだ入っていたとは知らなくて」
すまなそうに、しかし、勝ち誇ったような不気味な笑顔だった。
つづく
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