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奈央と出会えたから。<227>

[520]  麻呂  2008-09-20投稿

『奈央ちゃん。辛いのは奈央ちゃんだけじゃない。

みんな、何かしら人に言えない悩みなんかを持って生きているんだよ。

勿論、あたしも。』


『ミズホさん‥‥も?!』



『そうよ。』



ニコッ――



ミズホさんの、その笑顔に――



心が救われる思いがした――





『あたし、中1のトキ、親に反抗ばっかしててさ。

毎晩のように、仲間とトモダチの家に集まって、

時には家に帰らないコトもあったの。』


『はい‥‥。』



へぇ‥‥そうなんだ――



『うちの両親て、いわゆる仮面夫婦ってヤツ?!

表面上は、仲良くやっている様に見えるケド、

実際のところは酷かった。

父は勤務先の会社の若いコと噂になるし、

その“はらいせ”だと言って、

母は母で、パート先の上司と関係を持っていたの。』



あたしはミズホさんの話を真剣に聞いた。



聞いている振りをして、相槌を打っている訳では無くて、



本当に、真剣に耳を傾けていた。





『ある日、何時も一緒にいた仲間のうちの一人が、万引きで捕まったんだケド、
そのコが、その店の店長に言ったの。

“山下さんに、やれと言われました。”ってね。

そう‥‥あたしは、仲間に裏切られたってコト。』



『酷い‥‥。』



思わず呟いたあたし。



『店に呼び出されたあたしの母親は言ったわ。

“あんたは何で親を困らせる様なコトばかりするの!!
あんたなんて産まなければよかった。”
って――』





こんなに辛いコトを思い出しながら語っているのに、



ミズホさんは、あたしに向かって淡々と話し続けたんだ。

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