時と空の唄5-5
目の前には夢の中ではお決まりとなっているこの小屋の風景がある。
シーラと出会った日同様、今まで見ていた夢とは少し違う。同じ風景の中で違うことが起こっているのだ。
この日は母さんの遺体がある訳でも誰かが傍にいて会話をしているのでもない。ただ、幼い自分が誰もいない小屋にいるだけだ。
そしてどこからかシーラの歌うあのリネア・トリスタが聞こえてくる。
どこから聞こえてくるのかと外に出てみた。
真っ赤な夕焼けに染まった世界だった。
そんな真っ赤な村を少し歩いてみることにした。
やがて小高い丘の、現実では母さんの墓がある場所に来た。
この夢の中でもやはり母さんの墓がある。
一体、何なんだ?
誰もいない、ただ夕焼けの広がる真っ赤な世界。どうしていつもと違う?
そう思っていると背後に人の気配がして振り向いた。丘を下る長い銀髪。
見失ってはならないとランスォールは追いかけた。
村のあちこちを回りやがて着いたのはランスォールの家だ。
銀髪が振り向いた。
しかし、そこでランスォールの夢は覚めた。
辺りを見ると普通の状態のようだし、何より仲間たちはまだ眠っている。
少しだけ安堵の息が漏れた。
まだ外は暗い。
夜明け前だろうか。
そっと窓を開けると朝のひんやりとした空気が入ってきた。
窓を閉め、今度は二度寝の為に毛布にくるまった。
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