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ロストクロニクル1―4

[512]  五十嵐時  2008-09-21投稿
「今、なんて?」
タクトが恐る恐る問いかけた。
「だから、忘れたんだよ!」
今度は開き直ったようだ。
「ふざけるな!」
「ふざけてねぇよ!」
「ウェドが通路を教えるって言ったから連いてきたんだぞ!」
「そんなこと言っても仕方ねぇだろ!忘れたものは忘れたんだ!」
「止めてよ!今喧嘩してもしょうがないでしょ!」
パールが二人を一喝した。
「そうじゃ、今はその通路への扉を開けることが先決じゃ」
「壊せないの?ほら、その大きな剣なら」
「駄目だ」
「どうしてだ?」
「これ、威嚇の為の飾りでよ。使えねぇんだ」
へへへ、と力無く笑う。
「う・・そ、戦えないの」
「そんなことはねぇ。俺の『ハンマー』があったらなぁ」
「何処にあるんだ?」
ウェドは下の方を指差した。
「地下か?」
小さく頷いた。
「ムシが」
「近づいて来たぞ。どうするんじゃ」
「足止めするからその間に思い出しておくんだ」
いよいよムシたちが近づいて来た。足音が間近に聞こえる。
「えーと、地下の街の名前だったな。えーと」
地下の街・・・
「クォールマーク」
タクトが呟いた。
「そうだ!」
ウェドは叫んだ。
「クォールマーク!」
地下へと続く扉が大きな音を立てて開いた。

「助かった」
「危なかったわね」
扉の中は目の前の人も見えないほどの暗さだった。 「何故、わかったんじゃ」
「昔、お婆ちゃんが教えてくれたんです」
「どうなってるの?」
「これで明るくなっただろ」
ウェドが壁に掛かっていた松明に火を付け、持っていた。さっきから火打石の音がすると思ったら
「死にかけたじゃないか!」
「悪かったと思ってる」「まぁ、いいじゃない、みんな無事だし」
「そうだね」
なるべく明るい調子で答えた。タクトも少しウェドを責め過ぎたと思ったからだ。
「よしっ!俺に連いて来い!これからはちゃんとガイドするぜ!」
「よく言うわよ」
パールが呆れた声を漏らす。
「大丈夫。今までの分までちゃんと案内するぜ」
「そうと決まれば早速出発じゃ」
老人は相変わらず急かす。
「これからこの暗い通路の中、何が起こるか分からない」
「でも、大丈夫よ」
パールが前向きな答えを返してきた。

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