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時と空の唄6-6

[310]  花神 ミライ  2008-09-26投稿

シーラは俯いていた顔を上げた。
「シーラ、もう一度世界の為に研究をしよう。」
一瞬、ぐらりと世界が歪んだかと思った。
「セカイの…ため?」
そんな呟きが口から漏れる。
だんだん目の辺りが熱くなってきた。
「そうだ。もう一度あの頃のような研究を。」


ウソツキ。


「何が…世界よ………」
「シーラ?」
あの頃のような研究。
それは、沢山の命を削る果てのない、哀しみを生む。親のない子を、子を奪われた親を、愛する者を奪われた恋人を、友達を、家族を生む。

そんなモノに、意味はないのに。

「あの頃は『世界のため』なんかじゃなかった。
ただ、純粋に、単純に人の役に立つことだった!
私はあの頃の父さんの理想を信じたのよ!!」
瞼が熱い。
「人の役に立つことも、世界を救うことも、大差はない。
どちらも平和を勝ち取る為だ。」
「世界を救う為に、無意味な戦争を起こそうというの?そんなことで勝ち取った平和は、幻だわ。」
「そうかも知れぬ。だが今の世界は普通のやり方では救いようがない。絶対の力での支配することこそ平和を掴む道だ。」
「違う!恐怖で人を支配してもそんなのは平和でも何でもない!
それはただ父さんが自分の国を欲しいだけよ!」
シーラは叫んだ。

バーン、と扉を蹴破る音がした。
振り向けば息を切らして佇むランスォールの姿があった。

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