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暗闇の女25

[644]  あぶら翔  2008-09-27投稿

「イィヒヒヒッ…イィヒヒヒッ…ケケケ…ユカイ…ユカイ…」


その声に振り向くと 血の付いたアイスピックの先をペロリと舐めてる…く…黒田のり子が不気味に立っていた。



???――――――――!僕はもう、訳が解らなくなってきた。


ただ一つ僕が理解出来た事は、僕が家に帰って来た時に小さな体を震わせて、母の為に駆け付け大怪我をし、涙を流しながら僕を説得していた【黒田のり子】は もうそこにはいなかった。






「ヒヒヒッ…ケケ!志津江っ!まだ くたばって無かったのかい?
二階に逃げ込んだのは褒めてやるよヒヒヒッ…まぁ放っておきゃ どの道クタバルと思っていたけどねぇイィヒヒヒヒヒヒッ…」


狂った叫び声が部屋中に響く。


「じゅ…順ちゃんに秀君の事頼まれたもの!…死ねないわよっ…」


目の前の膝を抱えた女が母の事を順ちゃんと呼んだ。

僕の事を秀君とも言った…。

僕が小さい頃に お姉ちゃんから呼ばれていた言い方…。



「ひ…秀君でしょ?…大きくなったわね…、お母さんの事…ごめんね…守れなくて…ごめんね…」

志津江はボロボロと涙を流しながら僕に謝ってきた。


その小さな白い手には昔、狂気に満ちた女にガラスの破片で刺された傷痕がクッキリと残っていた。




僕は…遠い昔の記憶が蘇って来ていたんだ。

この黒木志津江は母さんを殺してはいない…。



僕は記憶と共に涙が止まら無かった…。




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