三日月の晩に【読み切り】
緩やかなメロディーに混じって波の音が僅かに聞こえる。
楽しそうに踊る人々を眺めながら、美しいドレスを揺らして海へと視線を移す。涙の音に誘われるように外へと出た。
頬を撫でる風が、仄かに海の匂いを運んでくる。止めていた髪がほどけて、風になびいた。
髪をかきあげて夜空を見上げる。凛とした横顔を月の光が照らす。
今夜は三日月。欠けた月と自分を重ねて、そっとため息をつく。
お城の方へ耳を傾けると、ラストワルツが流れていた。
この曲が終われば、私は結婚する。
見ず知らずの王子と。それが姫である私の役目。
もう一つ、ため息を海に落としたが、穏やかな波と、強い風でため息はすぐにかき消された。
「姫。私と共に行きませんか?」
唐突に、一つの光が差した。
三日月の淡い光の中、穏やかに笑った少年は涙を流す少女へと手を差し伸べる。
「えぇ…ええ、行くわ…!」
こうして姫から少女へと変わった彼女は、結婚式直前にお城を抜け出し、自らの意志で好きな人と結婚した。
そして、王子もまた、式直前に抜け出していた。
そして彼も好きな人と結婚したのだ。
あの晩出逢った、三日月のよく似合う、美しい女性と…。
楽しそうに踊る人々を眺めながら、美しいドレスを揺らして海へと視線を移す。涙の音に誘われるように外へと出た。
頬を撫でる風が、仄かに海の匂いを運んでくる。止めていた髪がほどけて、風になびいた。
髪をかきあげて夜空を見上げる。凛とした横顔を月の光が照らす。
今夜は三日月。欠けた月と自分を重ねて、そっとため息をつく。
お城の方へ耳を傾けると、ラストワルツが流れていた。
この曲が終われば、私は結婚する。
見ず知らずの王子と。それが姫である私の役目。
もう一つ、ため息を海に落としたが、穏やかな波と、強い風でため息はすぐにかき消された。
「姫。私と共に行きませんか?」
唐突に、一つの光が差した。
三日月の淡い光の中、穏やかに笑った少年は涙を流す少女へと手を差し伸べる。
「えぇ…ええ、行くわ…!」
こうして姫から少女へと変わった彼女は、結婚式直前にお城を抜け出し、自らの意志で好きな人と結婚した。
そして、王子もまた、式直前に抜け出していた。
そして彼も好きな人と結婚したのだ。
あの晩出逢った、三日月のよく似合う、美しい女性と…。
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