Killing Night Freaks/Chap.2-6
走る。道無き道を、草茂る山中の獣道を、僕は全力で走っていた。手には鉈が握られているが、振るって走る余裕は無い。
ふ、と鋭く息を吐き、震脚。柔らかい土を踏む感触がまず返る。……足場が悪い。沈み込む。……けれど。続いた反動で跳ね上げるように宙に身を置き、宙返りをするような捻る動作で背後を見た。
後方、草を掻き分けこちらに近付く影が三つ。海潮はいない。先程別れたばかりだ。……無事ならいいけど。心配する余裕すらこっちには無いから。
だから心配するのはこれが最後だ。後は全力で生き残ることを考えろ――!
「!」
追い縋る影のうち、一つが宙に居る僕の元へと跳躍した。逆さまで浮かぶ僕には回避手段は無い。
だとすれば、取るべきは迎撃。だからそうした。逆さまからさらに身を返し、中途半端な宙返りを完成させる。無理矢理な運動に身体が軋み、けれど行為を完遂する。回転。そのエネルギーを載せた刃が、追跡者の頭蓋を縦に割った。空間に撒き散らされる赤色。放物線を描き、前へ。未だ血液を漏らし飛ぶ追跡者を見れば、それは犬の形をしていた。狩りに最も適した獣、猟犬だ。
着地、と同時に右へ。身体を捻る事で出来たスペースに顎の噛み合わせる音がした。すかさず身を屈め足払い。前動作は回避行動を使用した速攻だ。空間を噛む猟犬が宙を舞うと同時、頭上を爪が掠め、髪が幾らか切り離された。見れば正面、爪を空振る犬の姿がある。足払いの勢いそのままに身を起こしながら刃を振るい、円弧を描く奇跡で横に断ち割った。木に叩きつけられ裂かれた腹から臓物を零し絶命。そうして身を起こそうとしている残りの一匹の頭を踏み砕けば、一応の片は付いた。刃を振るい、血糊を飛ばす。緑に赤の斑模様が描かれる。
「……さて、と」
これは一体どうしたことかね。猟師に恨まれるような事はしてないつもりだけど。何か気に障ることしたっけか。
回想。
海潮と山に入り、山頂を目指そうとした。予定では一度山頂に上り、二手に別れて下山。その途中で各々捜索を済まし、ペンションで合流する予定だったのだけど。山の中腹で、いきなり八頭の猟犬に襲われた。二匹は何とか撒いたものの、残る六匹をどうにも出来ずに交戦。二手に別れて逃げながら各個撃破、という流れになったのだけれど。
「……思い当たる節が無い」
特に異常行為はしてない。恨まれるようなこともしていない。
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