携帯小説!(PC版)

虫6

[392]  もね  2008-10-02投稿
結局私は刑事の期待した答えとは大幅にズレた言葉ばかりを発した。「自分が、虫だと思ったんです」「殺して彼も、虫だと思ったんです」忌まわしい生き物を見ていた事に急に気付いた様に刑事ははっとして、直ぐ部屋を出て行った。
暫くして数人の警官達に囲まれる形で、私は留置場へと促された。取り調べは予定より早めに終了した。明日は急遽、精神鑑定を行うらしい。あの時彼が車の窓から外を見ていた様に、私はぼんやりとしたまま外に目をやった。私が逮捕された事を誰も知らないだろう。誰も私に興味はない。私も彼らに興味はない。鉄格子の外に灰色のコンクリートと、止まない雨がびしゃびしゃと音をたてているのが見えた。

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