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愛のサービス

[144]  桔平  2008-10-02投稿
「またリスカしちゃった・・・」
1ヶ月ぶりに桜子から来たメール。
「電話できるか?」
1ヶ月ぶりにオレが返信したメール。

「あれほどリスカだけはすんなって言ったろ・・・血、いっぱい出てんのか?・・・今から行くから玄関の鍵開けとけ。」
1ヶ月前と何も変わらない説教・・・
「うん。」
1ヶ月前と何も変わらない桜子の返事・・・

電話を切って、オレは急いで車を飛ばした・・・40分かかる道のりを20分で駆けつけた。

玄関を入り、彼女の寝室をのぞくと、桜子は左腕から血を流し、倒れたかのようにカーペットに寝ていた。
見慣れた光景・・・涙が出そうだった。
オレはタオルで桜子の血を拭き取り、傷を消毒し包帯を巻いた。
桜子は一度に何ヵ所もカットする・・・今回も5、6箇所・・・・左腕は紫色になり、手のひらは冷たくなってる。

包帯を巻き終えたと同時に桜子が目を覚ました。
オレの顔を見て微かに微笑んだ。
桜子はいつも睡眠薬を飲む・・・不眠症で、微かに眠りにつけても悪夢を見て起きてしまうから・・・

「誰かわかるか?・・・バ〜カ」
オレが声をかけると、また微かに微笑んだ。

「さて、布団敷いてやっからちゃんと寝ろ」
オレは布団を敷いて、彼女を運んだ。

「もうカットすんじゃねぇ〜ぞ・・・お前の介護士じゃねぇ〜んだからよオレは。」

桜子はまた微笑んだ。

「じゃ、やることやったし・・・帰るぞ。」
笑顔でそう伝え部屋を出ようとした時、桜子はギュッとオレの手を握った。

「もう少しそばににいて・・・」

震えるような声で、泣きそうな顔でそうつぶやいた。
1ヶ月前まではいつも朝までいた部屋・・・当たり前のように朝まで桜子を見守っていた部屋。

「いいよ」

そう伝えると桜子はまた眠りについた。

彼女の寝顔を見てると、桜子との濃密な半年間を思い出した。

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