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Killing Night Freaks/Chap.2-10

[473]  夢の字  2008-10-03投稿

こだました銃声に顔を上げる。反射的に頭に浮かんだのは海潮の事だ。敵、それも大物に遭遇したか。食べかけのチョコバーの残りを口の中に叩き込み、走り出す。

どちらから聞こえたか、と記憶を辿ろうとしたところで再度の銃声。山の中腹、僕が海潮と別れた場所からさほど離れてはいない位置。確認して、腰に下げたホルダーから鉈を抜いた。手の中に強く握る。力の込められた掌に汗が滲んで木製の柄に染み込み、寧ろ滑りを悪くした。馴染む。軽く振るえば目の前の枝が纏めて切り払われ宙を舞った。拓かれた山道、その最短ルートを行く。

前方右側から茂みの揺れる音。猟犬だ。鋭い牙が並んだ口を大きく開き、飛び掛かってくる。そこに鉈を突き入れた。だけどそれが頭蓋を砕くことはない。巨大な鋼の塊を猟犬が噛み、喉への到達を防いでいた。構わずに鉈を振り下ろし、下顎を縦にかち割る。即座に手の中で鉈を回転させ、振り上げる動作で喉へと刃の先端を引っ掛けた。そのまま上空へ投げ飛ばす。血を撒き散らしながら後方へ飛んだ猟犬を無視し、先を急ぐ。

行き先から、再度の銃声。まだ、海潮は生きている。響いた銃声は三回。よく持ちこたえている。けれど、

「僕が行くまで、堪えて」

それで状況を好転させることが出来るだろうか。相手は銃器……しかも銃声からライフルだと判断できる……を、保持している。いくら遮蔽物が多い山の中とはいえ、戦力に違いが有りすぎる。対処方を考えなければ。かといって逃げれば、相手のアドバンテージを最大限に利用できる“狙撃”という手段を許すことになる。明らかにこちらに不利な状況。それでいて、今決着をつけなければならない。

「どんなマゾ仕様だ、このミッション……!」

どのみち食料が限られている現状では、短期決戦が好ましい。今やらなければやられるのはこちら。全く、ふざけてる。こっちは襲われる理由すら判然としないのに。

駆け抜ける茂み。その中に、

「……海潮!」
「おう、カヅキか」

そう返事する海潮の顔色は青く、対照的に彼が座り込む地面は赤い。撃たれた。一瞬でそのことを理解し、頭に血が上る。が、

「……っ!」

唇を噛んで心を落ち着け、海潮の怪我の具合を確認する。脇腹。幸いにも銃弾は急所を逸れていた。が、損傷が激しい。

銃声。近くの木の幹が大きく刔れる。鑑みるに、

「ブランクコア、か……!」

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