十字路とブルースと僕と俺 3
8月13日
朝、目覚めたとき、昨日聞こえていた音はすっかり聞こえなくなっていた。歯を磨き、顔を洗い、朝食を食っているそのあいだ中、全神経は両の耳に注がれていた。前の晩、家に帰ってきてから母や姉たちにも音が聞こえるか訊いてみたが、そんな音は聞こえないと言われた。おれはガキながらに、昨夜の奇妙な音や声らしきモノは、幻聴もしくは空耳なんだと自分なりの答えを出し、忘れようとしていた。太陽が高く昇っても音はまったく聞こえてくることがなく、夕方になろうかという頃には、おれもだんだんと音の存在を忘れかけていた。子供の時というのは、稀有なことの連続みたいなもので、ものすごく多情多感で、不思議なことが起こったとしても、今、目の前にある出来事にまた気を奪われてしまい、前に起こった出来事は徐々に薄れていき、場合によっては忘れてしまう。そうして昨夜あれだけ気になっていた音ですら、頭からさらさらと流れ出ていこうとしていた。太陽は沈みこみ、漆黒の闇が深く広がっていった。
朝、目覚めたとき、昨日聞こえていた音はすっかり聞こえなくなっていた。歯を磨き、顔を洗い、朝食を食っているそのあいだ中、全神経は両の耳に注がれていた。前の晩、家に帰ってきてから母や姉たちにも音が聞こえるか訊いてみたが、そんな音は聞こえないと言われた。おれはガキながらに、昨夜の奇妙な音や声らしきモノは、幻聴もしくは空耳なんだと自分なりの答えを出し、忘れようとしていた。太陽が高く昇っても音はまったく聞こえてくることがなく、夕方になろうかという頃には、おれもだんだんと音の存在を忘れかけていた。子供の時というのは、稀有なことの連続みたいなもので、ものすごく多情多感で、不思議なことが起こったとしても、今、目の前にある出来事にまた気を奪われてしまい、前に起こった出来事は徐々に薄れていき、場合によっては忘れてしまう。そうして昨夜あれだけ気になっていた音ですら、頭からさらさらと流れ出ていこうとしていた。太陽は沈みこみ、漆黒の闇が深く広がっていった。
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