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夢追ひ人

[660]  キツネの狐  2008-10-05投稿
目を覚ますと頭と枕が擦れる音と体中の汗を感じた。

無意識に膝を折って小動物が眠る格好になる。指の先を頬に当てると驚く程冷たい。まだ、8月だと言うのに体全体が冷たい。しかし、僕は、慣れた動作で体を伸ばして窓へ行き陽の光を浴びて温まる。もう慣れたのだ。初めてこの夢を見たのは、一週間前だ。その朝は、ドラマの様に勢いよく飛び起きた。恐怖心が残った体は、ガタガタと小刻みに震えて熱い湯船に浸かるまでそれは続いた。あの日から毎日のように同じ夢を見ている。臨場感のあるハッキリとした夢。

僕は、元々夢をそんなに長く覚えられない人間だ。起きた時にハッキリと覚えていた夢だって、2時間も経たない内に記憶が薄れてしまう。
けれど、この夢は、一日中覚えている。

ー正夢か?

頭に浮かぶこの言葉は、以前テレビで観た番組の影響だ。人間の脳は僅か数%しか使われておらず、残りには無限の可能性があると言う。正夢もその類らしい。
もし、これが正夢になるのなら僕は、この後どうなるのだろうか?

いつも行きつく問に今日も考える。あの恐怖心から多分、かなり怖い目にあうのだろう。でも、どんな?

ピピッ、ピピッ、ピピッ、ピピッ…

聞き慣れた電子音が部屋に響く。目覚まし時計のアラームだ。この夢のおかげで目覚まし時計の仕事が半分減ってしまった気がする。いっそう、捨ててしまおうかと考えたが、この夢が必ずしも明日も見れるとは限らないのでまだ、この部屋でやるせないであろう仕事をしている。


学校は、夏休みだが図書館に出掛けることが日課になっている。別に勉強をするのではなくクーラーの利いた部屋で快適に過ごすためだ。そして、いつもつるむ毅と飯を食いに行く待ち合わせ場所でもあるのだ。

毅は、同じ学部とバイトということもあって最も仲がいいヤツだ。球技が苦手な僕と違ってサッカーが上手くサッカーサークルに所属している。彼曰わく、ボールと同じ位僕と気が合うらしい。嬉しいような複雑な気持ちだ。

「健、お待たせ。何食べる?」
ヒソヒソ声で毅は、話かけてくる。
「学食行く?」
「毎日学食だからな…外食しようぜ。」

僕は、その言葉に従った。正直、特に食べたいものなんて無いのだ。

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