十字路とブルースと僕と俺 4
居間のテレビでは、この当時一世を風靡したお笑いコンビが、漫才をしていた。それを見ながら俺たちはげらげらと笑っていた。夕飯を終え、おばあちゃん、父と母、父の妹夫婦、姉ふたりとおれの全員が居間に集まっていた。そのお笑いコンビが大好きだったおれは、尿意をもよおしていたにもかかわらず、漫才が終わるまでずっと我慢していて、終わったと同時にトイレへと突っ走った。縁側の細い廊下の一番奥にトイレはあり、居間からはだいぶ離れているためか、何処となくうら淋しい雰囲気がトイレ周辺には漂っていた。おっかなびっくりトイレで用をたし、さて戻るかとおもったその時だった。昨日の音が再び聞こえだした。外からは虫の声が聞こえていた。居間からは微かにテレビの音が聞こえていた。そのふたつの音よりもはっきりと、そして前の晩にはちゃんとわからなかったことだったがその音は、いやその音と声は、間違いなく音楽だった。
唸りをあげながらなめらかにメロディーを紡ぐギターの音色と、悲哀を感じさせるパワフルな声音は、今まで聴いてきたどんな音楽よりも、美しく聞こえた。
唸りをあげながらなめらかにメロディーを紡ぐギターの音色と、悲哀を感じさせるパワフルな声音は、今まで聴いてきたどんな音楽よりも、美しく聞こえた。
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