携帯小説!(PC版)

トップページ >> ノンジャンル >> 夜に咲く華〜その16〜

夜に咲く華〜その16〜

[262]  岬 登夜  2008-10-11投稿
「女は自分に子が宿ったら産むって思うものだと婆が言ってた。私の母親は身体が弱くて子供は無理だと言われたけど私を産んですぐ亡くなった。そのせいで父親は私をあまりよく思ってないのだけど婆は言ってた。女は自分の命を次に繋げる為に子を産むのだと。それは誰にも止めらない女の本能だと」

「なら、俺はその本能のお陰で今生きていられるんだな。やっぱり女は強いよ。お前を含めて特に吉原の女はよ…」

ごちそうさん。と小声で立ち去る連二郎の背中から紅は目を離す事が出来なかった。

なんだろう。この胸の高鳴りと、この絡まった感情。触れたい。側に居たい。だけど側にいると息苦しくて…。すごく気になる。何でも知りたいと思ってしまう。こんな気持ち…?何…?


生まれて初めてのその感情を紅は恋だとその時はまだ理解できなかった。



しばらくしての明け方、紅は離れから来る下駄の音を聞いた。

誰…?

夢うつつの中でその下駄の音が女の物であると感じていた。



空がどんよりと重たい雲で覆われると冬の到来を思わせる。最近朝晩めっきり冷え込むので紅華楼でも部屋に火鉢をいれ始めた。

「女将さん。離れの火鉢はこれで良いですか?」

番頭が少し大きめの火鉢を紅に見せる。

「そうね。じゃあ置きに行きましょう」

紅は番頭と共に火鉢を離れに置き、試し焚きしてみた。炭はすぐに赤くなり暖かい空気が流れる。

ここに入ったのは久しぶりだ。換気の為窓を開ける。雲の切れ間から日が指し部屋の中に入り込む。

部屋の隅で何かが光る。見ると見覚えのある簪が落ちていた。紅は何とも思わずそれを拾い母屋に戻る。


後ろ姿が見えたので紅は声をかけた。
「これ、落ちてたわよ」

「あっ、どこにいったかと諦めてたら。よかった」

簪を受け取り頭にさす。

「離れに落ちてたわよ。妙」

妙は離れと聞いて頬を赤らめた。

「そうですか。すいません」

その場を離れるように妙はそそくさといなくなった。

「?。妙?」

紅の頭の中にあの日聞いた下駄の音が響く。

まさか、妙?


そう思った瞬間、紅の心が痛んだ。

感想

感想はありません。

「 岬 登夜 」の携帯小説

ノンジャンルの新着携帯小説

サーバ維持用カンパお願いします。
WebMoney ぷちカンパ

Twitterで管理人をフォローする

利用規約 - サイトマップ - 運営団体
© TagajoTown 管理人のメールアドレス