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BAD GIRLその?

[484]  ケィ。  2008-10-12投稿

「私が?」

チェルシーが、新種の類人猿を見る様な目で俺を見る。
俺の言う事がよっぽど理解出来ないらしい。

「そ、アンタが、だ。もうアンタがここに居る理由が無いんだから」

俺がそう言っても、まだピンと来ないようだ。
冷ややかな眼で見下すだけで飽きたらず、事情を何もわかっていないおバカな俺の為に、親切に説明までしてくれる。

「私がここにいるのは、借金のカタに身売りしたからよ?まあ、前の生活よりよっぽど楽だけど。
私の所有権は今だってあの成金の変態野郎にあるわ。
もし逃げたりしたら当然追われるし、それに…」

チェルシーはそこまで話しかけて止まる。
その瞳に、悲しげな、諦めの影が差す。
ここへ来て初めて見た、彼女の弱さだった。

「それに…あの人が、困るでしょ」

それが、結局の所、彼女がここに居た理由。俺はわざと大袈裟にため息をついた。

「自分を売っぱらった旦那を思いやる必要が、どこにあるのかねぇ。
や、アンタは自分で選んだって言うんだろ、どうせ?
でもな、もしアンタが逃げても、奴はこれっぽっちも困らないんだ」

チェルシーの眉が怪訝そうにひそめられる。

「どう言う事?」

「死んだ」

俺はアッサリ、余りにもアッサリと宣告した。飯は?食った。ってノリで。

彼女はそんな俺の態度を冗談か何かだと取ったのか、
「え、えぇ?」
と、聞き返す。口が引きつっている。

「兄貴は死んだ。それをアンタに伝えに来たんだ」

突然の、考えもしない事実を突きつけられて、チェルシーはすっかり混乱してしまったようだ。
頭を抱えている間に、手元の煙草が指の側まで燃え尽きて、彼女はアチッと小さく悲鳴をあげた。

「えぇ?…嘘。ちょっと待って…」


しかし事態は待ってくれない。

ダカダカと、廊下にバカでかい足音が響く。

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