摩天楼 その19
曇っているせいか、月は見えない。向こうには街の灯りが点々と見えるのみ。
リリィがみんなの方を向いて挨拶しようとした時だ。目の前にひとつ影が立ちはだかった。
マーチだった。マーチはリリィをわざと無視して酒場の中に入って行った。
喉に何か詰まっているように苦しい。皆の方に目を向けた。
「今までいろいろとありがとう」
客達の視線は寡黙なマーチからリリィの方に再び移る。リリィはマーチが視界に入るのを避けたかった。
「さよなら」
そう言って足早に酒場を立ち去る。
「リリィ?」
ココはリリィに声を掛けたが遅かった。真っ暗な闇に消えてしまっていた。
空が唸る。
じきに激しい雨が降ってきた。
心配そうに立ち尽くす人々の後ろでマーチだけは知らん顔。
ラジオから流れる。
明日、カナイ市長がメライ地区を訪問するだとか…
いや、訪問なんて生易しいものではない。警察官も引き連れて大捜索といったところだ。
「どうするつもりだよ王子様」
ヒオは溜め息をついて呟いた。
リリィがみんなの方を向いて挨拶しようとした時だ。目の前にひとつ影が立ちはだかった。
マーチだった。マーチはリリィをわざと無視して酒場の中に入って行った。
喉に何か詰まっているように苦しい。皆の方に目を向けた。
「今までいろいろとありがとう」
客達の視線は寡黙なマーチからリリィの方に再び移る。リリィはマーチが視界に入るのを避けたかった。
「さよなら」
そう言って足早に酒場を立ち去る。
「リリィ?」
ココはリリィに声を掛けたが遅かった。真っ暗な闇に消えてしまっていた。
空が唸る。
じきに激しい雨が降ってきた。
心配そうに立ち尽くす人々の後ろでマーチだけは知らん顔。
ラジオから流れる。
明日、カナイ市長がメライ地区を訪問するだとか…
いや、訪問なんて生易しいものではない。警察官も引き連れて大捜索といったところだ。
「どうするつもりだよ王子様」
ヒオは溜め息をついて呟いた。
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