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悪霊1番

[625]  草立  2008-10-12投稿
私に憑りついている霊を斬って下さい。その日本刀で・・・・

いきなり目の前の女が冷然と話かけてきた。

場所は神戸の繁華街の安いカフェショップ。混み合った広い店内でたまたま隣のテーブルに座った女だ。
綺麗な女で、まだ若い。20才前後でスタイルも良いし顔も化粧は厚いが可愛いし、何よりも先程より超ミニなスカートから覗くしなやかな脚が気になっていた。
チラチラと脚を見てたのが気に入らなくて嫌がらせで突然このような薄気味悪い話をしてきたのか。悪ふざけなのか。

「誰かと勘違いしてませんか?」

という問いに表情を変えずにまた女は話しだした。しかも俺のテーブルにコーヒーのトレイをそそくさと持ち、席を移してきた。

「おじさんは自分では解ってないかもしれませんが、その力があるみたい・・私には感じるんです。あなたならあの霊を追い払えると思うんです。」

最近の若い奴は本当に礼儀知らずだ。いきなり変な話をしてきた上に俺の事をおじさんだと。俺の大事なプライベートな時間を潰しやがって、と腹を立てた。ただこの綺麗な脚が横の席から前の席に近づいて、より眺めやすくなったので完全に嫌な思いだとも言えない。

相手は若いし綺麗だし、無礼でも、まぁ良いかと思い話にのってしまった。俺もまだまだ修行が足りないなぁと思った。

また、とかく人間は「あなたは特別な力がある」などと言われると少しうれしいものである。

「良いよ。俺で出来るなら。」

軽いノリで受けてしまった。何だか面白そうな話だし、前々から習っている古武道の先生から聞いた不思議な世界の話にも興味あった。

詳しく話を聞いてみた。

女に二年前からある霊が憑りついたらしい。友達と肝試しに六甲山の山間の墓地に行ってかららしい。その晩の夢に野武士の霊が現れ、女を犯したのだと言う。抵抗出来ないまま野武士は時々夢に現れ女を襲い、弄ぶようになり、恋人と一緒に寝る時にも現れ嫉妬し、夢の中で荒れ狂うらしい。夢の中なのに現実の恋人の横でもベットで悶え苦しみ、うなされ、その淫靡で不埒な光景に恋人が「お前、淫乱か?」と去ってしまったらしい。

本当なら悲惨な話だ。

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