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年下の彼 ? 樹海

[318]  マリリン  2008-10-13投稿
理子は、凄まじい恐怖のため、思わず両の目を固く閉じた。すると、底無しの真っ暗闇の穴に、まっ逆さまに転落していくようだ。

「一体、私はどうなってしまったの!?」到底、目を閉じたままではいられず、恐る恐る、再び周りの様子を伺うと、今度は部屋中がぐるぐると、立っていられない程の猛スピードで、周り始めた。と同時に、頭が割れんばかりの耳鳴りと頭痛が襲ってくる。

這うようにして、やっと携帯を取り上げ、震えてなかなか思うように動かない指先で、哲也に最後の悲痛なメッセージを送った。「助けて!」そして気を失ってその場に倒れ込んだ。

それからどれぐらいの時間が経過したのか…
理子は、静かな雨音で目が覚めた。さっきまで、樹海の中で迷子になり、どうしてもそこから、抜け出すことができない悪夢に、囚われていたようだ。その夢をしっかり思い出そうとすると、彼女が迷い込んだ樹海は、彼女自身の部屋の中だったような気もしてくる…
そして彼女が寝かされていたベッド…そこは、窓にしっかりと鉄格子がはめられた、ある白い病院の一室だった。

窓越しには、霧雨に煙る、彼女にとっては見知らぬ街並みが、瞳に映った。
「ちまたに雨の降るごとく、我が心にも、雨ぞ降る…」
あるフランスの詩人のフレーズが、理子の脳裏に静かに流れた。



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