時と空の唄8-6
「なるほどねぇ〜。
でもね、それ、嘘よ。」
「…………は?」
「だから、嘘。
彼女が町に来たのは、お嫁入りとかじゃなくてただの買い出し。
あなたの早とちりよ?」
「で、でも確かにそんな話を聞いたんだ!」
「んじゃあ、デマだな、それ。」
レンデルの口から魂が抜けていく。しかも口をパクパクさせて。
「デ、デマ…」
このあとしばらく、彼は放心状態が続いた、というのは余談だ。
「さて?誤解が解けたようならさっさと仲直りしてくれないか?」
気がつけば日は真上から少し西に傾き始めている。
急いだ方が良いかもしれない。
近頃の夜の航海は巨大イカ(何故か討伐不可)が出るので少々危険なのだ。
「え、あ。悪い。」
ランスォールにそう言われレンデルはひょこひょことリリーラの待つあの客室へと降りていった。
「なんか、上機嫌ですね。彼。」
踊っているような足取りの彼を眺めながら雪が呟く。「…だな。」
呆れた口調でランスォールが返した。
また、自分はああなりたくないと堅く心に決めながら。
結局、この騒動のせいでこの日の航海は中止。
明日に持ち越された。
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