飛行機雲21
李遼はすぐに波に慣れて、翻弄されるのを、楽しみ出した。二人でいっぱい笑って、はしゃぎ倒して、疲れて、砂浜に寝ころんだ。
李遼は、ずっとわたしの手を掴んで離さない。
波が、わたしをどこかに連れて行くような気でもするみたいに。
わたし、どこにも行かないよ。李遼の側がいい。
上を向くと太陽が眩しくて、顔を見合せた。
「お腹空いたね、何か買
って来ようか?」
そう言うと李遼は、
「一緒に行こう。」
と言って、起き上がった。
焼きそばと、コーラを買って、堤防の上に座って
食べた。ぶら下がった足に波が打ち寄せる。
足の先が、ぶつかった。
「足の指、長いね。」
わたしが言うと、李遼は笑った。
「そんなに気になる?」
「うん。」
「そういうの、フェチっ
て言うんじゃない?」
「李遼のだけだから、違
うと思う。」
李遼は返事をしなかった。黙って、水平線をじっと見た。
「どうかした?」
李遼は首を振って、前を見据えたままわたしの手をぎゅっと握りしめた。
「オレ、この海を越えて
来たんだな。オレの国は
遠くて見えない。」
「李遼、帰りたいの?」
わたしは、不安になった。
「日本に来た頃は、毎日
帰りたかった。故郷の山
や川が恋しかった。」
わたしは李遼の手を強く握りしめた。
李遼は、もっと強く握り返した。
「離したくないんだ、こ
の手を。ハルがオレを好
きだと言ってくれた時か
ら、ハルをなくすのが怖
くてたまらないんだ。ハ
ルは日本人で、オレは中
国人で、いつか、その事
がオレ達を離れさせてし
まうんじゃないかと思う
時がある。ハルがオレを
真っ直ぐ見てくれるから
オレは、ちゃんとした男
にならなきゃいけない。
でも、時々、オレでいい
のかって自信を無くす事
もあるんだ。」
「そんな事!」
わたしは叫んでいた。
李遼の言葉は、ゆっくりとしていたけど、深く心に突き刺さった。
涙が自然に溢れてくる。
「李遼こそ、ほんとのわ
たしを知らない。わたし
は、腹黒くってやな奴。
ひねくれてて、冷めてて
。でも、李遼といると、
少し、優しい気持ちにな
れる。李遼が優しいから
。わたしを好きって言っ
てくれるから。」
李遼は、ずっとわたしの手を掴んで離さない。
波が、わたしをどこかに連れて行くような気でもするみたいに。
わたし、どこにも行かないよ。李遼の側がいい。
上を向くと太陽が眩しくて、顔を見合せた。
「お腹空いたね、何か買
って来ようか?」
そう言うと李遼は、
「一緒に行こう。」
と言って、起き上がった。
焼きそばと、コーラを買って、堤防の上に座って
食べた。ぶら下がった足に波が打ち寄せる。
足の先が、ぶつかった。
「足の指、長いね。」
わたしが言うと、李遼は笑った。
「そんなに気になる?」
「うん。」
「そういうの、フェチっ
て言うんじゃない?」
「李遼のだけだから、違
うと思う。」
李遼は返事をしなかった。黙って、水平線をじっと見た。
「どうかした?」
李遼は首を振って、前を見据えたままわたしの手をぎゅっと握りしめた。
「オレ、この海を越えて
来たんだな。オレの国は
遠くて見えない。」
「李遼、帰りたいの?」
わたしは、不安になった。
「日本に来た頃は、毎日
帰りたかった。故郷の山
や川が恋しかった。」
わたしは李遼の手を強く握りしめた。
李遼は、もっと強く握り返した。
「離したくないんだ、こ
の手を。ハルがオレを好
きだと言ってくれた時か
ら、ハルをなくすのが怖
くてたまらないんだ。ハ
ルは日本人で、オレは中
国人で、いつか、その事
がオレ達を離れさせてし
まうんじゃないかと思う
時がある。ハルがオレを
真っ直ぐ見てくれるから
オレは、ちゃんとした男
にならなきゃいけない。
でも、時々、オレでいい
のかって自信を無くす事
もあるんだ。」
「そんな事!」
わたしは叫んでいた。
李遼の言葉は、ゆっくりとしていたけど、深く心に突き刺さった。
涙が自然に溢れてくる。
「李遼こそ、ほんとのわ
たしを知らない。わたし
は、腹黒くってやな奴。
ひねくれてて、冷めてて
。でも、李遼といると、
少し、優しい気持ちにな
れる。李遼が優しいから
。わたしを好きって言っ
てくれるから。」
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