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飛行機雲22

[239]  2008-10-17投稿
李遼は、わたしを力いっぱい抱きしめた。肌と肌が触れ合った。吸い付くようにぴったりと。
「ごめん、ハル。泣くな
。」
寄せられた李遼の頬も、濡れている。中国人って、男も女もほんと、よく泣く。映画とかで見た時、少し引いたけど今、わたしは微塵もそう思わない。彼の涙を信じられるから。この涙は嘘じゃない。こんなにもわたしを思ってくれるんだって、伝わってくる。たった15でこんなに人を愛せるなんて、思ってもみなかった。それも、こんなに短い間に。
わたし達は、長い間抱き合っていた。言葉もなく、波の音だけが聞こえる。その音に混じって、遠く、飛行機の飛ぶ音が聞こえて来た。
この音を消して。李遼を連れていかないで。ずっと一緒にいたい。心からそう思う。
太陽が傾きかけて、砂浜の人だかりが徐々に減ってゆく。
延々と砂浜を、手をつないで歩く。時々、李遼は貝殻を拾って渡す。受けとるわたしを見て、李遼は嬉しそうに微笑む。
帰りたくない。そんな想いがいつまでも同じ事をさせる。
日も落ちて、夜が近づく。ドーンと何処からか打ち上げ花火の音がした。
海岸線の切れた岬の向こうに小さく花火が見えた。遠い花火は、音とずれて開く。
しばらく二人でいくつもの花火を見送った。やがて李遼の顔がわたしの視界をいっぱいにした。
「ハル、好きだ。」
唇が軽く触れ合って、すぐに離れた。目と目があう。
次に重ねた唇は、前より長く離れずにいた。

家に着いた時は、10時を回っていた。李遼はわたしの家が見えるところまで、送ってくれた。
別れ際にわたしは、ありったけの想いを込めて
「また、明日ね。」と言って笑った。
「うん、明日。」
李遼が笑顔を返してくれる。
李遼は、わたしが家にはいるまで見ていてくれるんだろう。わたしは、一人で暗闇の中を駆けて行く李遼の背中を思い浮かべて心から祈る。
神様、どうか、明日の彼をわたしから奪わないでと。

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