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猫のラブレター3〜幸〜

[442]  hiro  2008-10-17投稿
やっぱり優しい人だ。温かい。
ヒト君は、すぐにわたしに気付いて、近づいてきてしゃがんでくれた。
「かわいいネコだねえ。君がチャイムを鳴らしたのかい?」
何か言っているが、わからない。何て言っているのかすごく気になる。
とりあえず、口にくわえた手紙をヒラヒラさせてみる。
「これ、僕に?ハートかあ。嬉しいなあ。」
ヒト君は手紙を受け取ってくれた。
「白いネコかあ。ネコだから、ネコちゃんだね。」
ネコちゃん?そんな風に聞こえたような気がした。気のせいかな?
「そうだ!このことを歌にしよう。早速作るぞ!」
喜んでくれてるのかな?ドキドキしっぱなしだ。
「ありがとう。ネコちゃん。」
ヒト君は、わたしの頭を撫でてくれた。もう、これだけで幸せ。
ヒト君が立ち上がり、家の中に入っていく。
わたしはじっとその姿を見つめていた。優しい人間だなあ。


あれから2週間が経った。友達をさがしてみたけど、1匹も見当たらなかった。
「もう1回、ヒト君に会いたい。」
この気持ちがだんだん強くなって、ヒト君の家の前にいた。
その場所で、日が暮れるまで待った。
ヒト君は帰ってこない。家の中からも出てこない。
夜が過ぎ、朝になった。まだヒト君はいない。
それから1日、2日と時は経った。
わたしは商店街に行くことにした。ヒト君をさがすために。

商店街は賑やかだった。わたしの心と正反対なくらい。
初めてヒト君と会った場所に来た。見た場所かな?やっぱりヒト君はいない。
電気屋に来た。何となくテレビに目を向ける。
〈3日前、交通事故で亡くなった、TAKAさんの遺作『猫のラブレター』がついに大ヒットです!珠玉のバラード、素敵です。TAKAさんおめでとう。〉
また人間の字だ。何て読むのかなあ?
目を閉じて耳を澄ますと、優しい歌声がテレビから聴こえてくる。
ヒト君の声ような気もした。
また、ヒト君の家に向かって歩き始めることにする。
―続く―

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