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猫のラブレター4〜旅〜

[473]  hiro  2008-10-17投稿
いつの間にか、ヒト君の家の前にいた。
やっぱり、いない…。
もう会えない気がした。
もう、会わない方がいいのかもしれない、とも思えた。
所詮は猫と人間なんだ。恋なんて…。
わたしは落ちていた空き缶を蹴ってから
「人間に恋するなんてありえなーい!」
と大きな声で叫んでしまった。ありえないんだ。
そこで、あの日のことが頭に浮かんだ。
手紙を渡した日。
ヒト君がわたしの手紙を受け取ってくれて、
すごく喜んでくれて、
頭を撫でてくれて…。
あの日の、ほんの数分の思い出だけで、頭が破裂してしまいそうだ。
蹴飛ばした空き缶を見て、こうも思った。
あの日の思い出が全部消えたら、わたしの頭は、あの空き缶のように空っぽになるに違いない…。

照れくさそうに、太陽が沈んでいく。
わたしの心も沈みそうだ。いや、もう沈んでいるのかも。
空を見上げると、電柱のてっぺんにカラスが立っているのが見えた。
その、勇敢な姿に見とれていると、
やがて、カラスは飛んでいった。

もしもわたしが
この空を
自由に飛べたとしても
空は飛ばないよ
臆病だからじゃない
君をさがしてしまうから

上を向いて歩いていると、電柱にぶつかった。
テレビが目に入る。またここか、同じ所ばかり歩いてる気がする。
〈今入ったニュースです。亡くなったTAKAさんのカバンから、宝くじが見つかりました。しかも、100万円が当たっているのです!これはTAKAさんの母に贈られるそうです。宝くじの裏には、ハートのマークが描かれていたそうです。〉
わたしは気にせず歩き出す。
友達をさがす旅にでも出ようかな。
果てしない旅の始まりだ!
そしてヒト君、さようなら。
―終わり―

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